「税金」はいつの時代も庶民の関心事だ。だが「税制」は、いささか小難しい話とされ、身を乗り出す人は少ない。誰から税をとり、どこの税をまけてやるか。社会を見据えたさじ加減が「税制」である。

 評判の大著「21世紀の資本」を携え日本にやって来たトマ・ピケティ先生は「格差の背景に不公正な税制がある」と喝破した。富める者がますます富む社会を是正するには、富を再分配する世界的な税制改革が必要だ、と主張する。

 誰も反論できない正論だが「理想論ですよ。国境を越える富裕税なんて」と冷笑が浴びせられている。「できやしない」と笑うのは誰か。不公正な税制で得しているのは誰なのか。そんな中で税制に目を向けよう、と専門家が動き始めた。「国民の立場に立った税制」を提案するという。

政府でも自民党でもない、
民間の税制調査会が発足

 8日、都内で民間税制調査会の旗揚げがあった。税制調査会とは、日本の税制を決める組織である。日本にはすでに政府・与党の組織が二つある。内閣府に設けられた政府税制調査会(政府税調)と、自民党税制調査会(党税調)である。

 民間税調は政府と政権党に対峙する在野の税調を目指すという。設立メンバーは税制学者の三木義一・青山学院大教授、元財務官僚で財政学者の田中秀明明治大学教授、マクロ経済のエコノミストで「資本主義の終焉と歴史の危機」の著者でもある水野和夫日大教授、租税問題の論客として参議院で活躍した峰崎直樹元財務副大臣、国際租税の専門家・志賀櫻弁護士の5人。旗揚げには学者や税務関係者など200人が集まった。

 政府税調は学者を中心に業界やメディアなどの代表で構成される、いわゆる有識者の集まりだが、顔ぶれをみれば民間税調は遜色ない。

 ただ、政府税調は制度の大枠や意味づけなどを話し合う「おしゃべりの場」で、税制の眼目を決めるのは自民党だ。税に詳しい長老議員が党税調を仕切り、業界の陳情を受けながら税率など具体的な中身をばっさばっさと決めていく。「電話帳」と呼ばれる分厚い書類に列挙された税目に、税調幹部が可否を判断する。この積み上げが日本の税制になる。