「その思想は異なっている」。2月の記者会見で、白川方明・日銀総裁は、現在の政策と量的緩和策との相違点を説明した。

 あまり報じられていないが、日銀の資金供給が明確に拡大されている。超過準備が大量に発生している状態を量的緩和と呼ぶのなら、現状は“事実上の量的緩和策”と見なせるだろう。

  「白川日銀は対策が小出しだ」とよく批判されるが、銀行間の資金貸借市場であるコール市場から見ると、大量の資金供給が行なわれている。22月末の日銀当座預金残高は13.6兆円だった。昨年2月末は8・7兆円だから56%増だ。この調子だと、3月末は17兆~20兆円になる可能性がある。

 現在のコール市場では余剰資金が溢れ、金融機関の資金調達ニーズが激減している。無担保コール・オーバーナイトの取引量は、金利が0・3%だった昨年11月に比べ3分の1未満に減っている。

 2001~06年に行なわれた量的緩和策の場合、日銀は短期国債などの安全資産を見合いに資金供給を拡大させた。日銀当座預金(準備預金)を増やすことが第一の目的だった。当時の政策をイエレン・サンフランシスコ連銀総裁は今年1月に次のように評した。