本連載の最終回は、昨今、日本でもセブン&アイグループなどが積極的に進めている小売業における「ネットとリアルの融合」を成し遂げようしている2社を紹介する。

「ネットとリアルの融合」を説明する際、必ず登場するのが「O2O(Online to Offline)」という言葉。インターネット上(オンライン)で閲覧していた物やサービスを、実際の店舗(オフライン)での購買に結びつけたり、サポートしたりすること全体を指す。「食べログ」などの口コミサイトを見て、会食の店を決めたことは誰でもあるだろう。この行動も立派なO2Oだ。

 そう考えると、O2Oという考え方は最近急に出てきたものではないことがわかるだろう。ただし、近年はオンライン上の閲覧を、よりダイレクトに実店舗での販売につなげたり、クーポンや割引、在庫のリアルタイムデータなどを統合し、小売業者と買い物客に新たな体験を提供できるようなサービスが出始めている。O2Oのステージが数段上がったとも言うべきだろうか。

 O2Oのステージを押し上げた要因はいくつかあるが、もっとも大きなものはスマートフォンの普及だ。常に持ち歩く端末のアプリケーションから利用履歴や位置情報までもリアルタイムに取れる。通信環境もより大容量のデータのやりとりが少ないコストで可能になった。オンラインでの購買も増え、かつてのようにオンラインでの買い物に抵抗を感じるという人も少なくなっている。同様にクラウドやビックデータなどのインフラも整備されている。

 こうした一つ一つのパーツが整い、それらが独立して存在するのではなく互いに繋がりあり、例えば顧客の購買データや顧客データなどの統合が進んだのだ。この環境が、O2Oの拡大に繋がっている。

4000人の「ショッパー」が
あなたに代わってお買い物!

【最終回】<br />米国発O2O企業が示す“未来の買い物体験”<br />「インスタカート」と「ファイブラン」インスタカートに登録した一般人であるショッパーが、ユーザーの注文した食品を買って、手元に届ける

 そうした環境が整備された時代に上手く乗った会社の一つが、今回紹介するインスタカート(instacart)。パソコンやスマートフォン、タブレットなどのオンライン上で、生鮮食品を中心に食品を選ぶと、最短1時間で実際に手元に届く。届けてくれるのは「ショッパー」と呼ばれる、同社に登録している一般人。そのショッパーが同社が提携する大手スーパー、例えばホールフーズやセーフウェイ、コストコなどで自分が選んだ食品を購入してくれる。

 ショッパー向けのアプリケーションが開発されており、そこには最短でどの道を通ればスーパーに行けるか、またスーパーのどの棚に目的の商品があるかまで指示を出してくれる。

 利用者はスーパーで売られている正規の価格と、手数料を支払う。初回の利用は手数料タダで、次の利用から35ドル以上の買い物をした場合、1時間以内の配送で5ドル99セント、2時間以内の配送では3ドル99セントだ。