中国 2015年2月16日

『韓非子』を読めば習近平がわかる?
「反腐敗」も「法治」もぜんぶ中国の古典に書いてある

腐敗撲滅キャンペーンでお買い物カードは風前の灯

 さて、この政府機関の対応に大活躍するのが「贈り物」である。現金は直接的すぎるしかさむので、人気があるのが有名百貨店や大手スーパーのお買い物カード(クオカードのようなもの)だ。

 この時期、どこのスーパーのサービスカウンターも、お買い物カードを購入するお客で賑わっている。領収書も発行され、経費にも計上しやすいので、お互いにとって便利な仕組みだ。10万元(約190万円!)単位でお買い物カードを大人買いしている強者もいる。

 このお買い物カードに、一昨年激震が走った。習近平政権の腐敗撲滅キャンペーンに目をつけられ、5000元(約9万円)以上のお買い物カードを購入するには、小切手で支払うか身分証明書を提示しなくてはならなくなったのだ。これによって、お買い物カードと購入者は紐付けされることになり、贈る側にも贈られる側にも足がつくリスクが生じたのである。

お買い物カードの広告【撮影/荒木尊史】

 この腐敗撲滅キャンペーンでふと頭をよぎったことがひとつある。習近平国家主席のバイブルは古代中国の思想家「韓非」の書物ではないか、という推理だ。習政権はいま、腐敗撲滅キャンペーンで徹底した汚職の取締りを強化しつつ、新たな指針として「法治」を掲げ中央集権化を進めている。

 韓非の思想を採用し、ついには中国を統一したのが秦の始皇帝である。故邱永漢先生も、古代中国の数多い思想家の中で、常々好きだと言われていたのがこの韓非と孟子であった。

 簡単に言うと、『論語』で有名な性善説を唱えた孔子とは真逆に、性悪説を唱えたのが韓非だ。韓非は自著の中で、「人は法によってのみ治められる」と説いている。信賞必罰、決められた法律を徹底的に世に知らしめ、なお一切の例外を築いてはいけないとしている。まさに習近平主席が掲げている「法治」そのものではないか。また、韓非は質素倹約の徹底が国を治めるのに非常に重要であるとも説いている。

 その他にもいま読み返すとピンとくるものが多く、習主席の談話と同じような逸話がいくつも韓非の書物のなかに見つけられる。

 例えば『亡国のきざし』には、「贅沢三昧していると国は滅びる」「質素倹約をすすめ、これら贅沢と腐敗を防ぐには君主に権力を集中しなければならない」と記してある。

『五種類の害虫』では、「どんな大木でも内部を害虫に食い荒らされたら、指一本で倒せる」とし、5つのパターンの害虫が記してある。その他にも“君主は人を信じるな、わざわいは愛するものから生じる”や“愛の政治はあり得ぬ”“仁義では勝てない”“殺すか親しむか”など、昨今の中国の政治スキャンダルや政治指針をみていると、恐ろしく韓非の書物の内容と一致するのだ。

 興味のある方は、是非とも韓非を一読してほしい。新たな発見があるはずだ。

韓非の本。いろいろあるがこれが一番わかりやすい【撮影/荒木尊史】

(文/写真・荒木尊史)

著者紹介:荒木尊史 1974年鹿児島県生まれ。2005年より、チャイニーズドリームを夢見て北京で製パン業を営む。邱公館(北京)食品有限公司。 

幸福の「資本」論|橘玲著 幸福の「資本」論 重版出来!
橘玲著

あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」。あなたが目指すべき人生は?
定価:1,500円(+税) 発行:ダイヤモンド社
購入はコチラ!
世の中の仕組みと人生のデザイン|橘玲のメルマガ配信中! 20日間無料 ザイでしか読めない!橘玲のメルマガ「世の中の仕組みと人生のデザイン」も好評配信中!
月額800円+税
いますぐ試す(20日間無料)

バックナンバー

»関連記事一覧を見る

海外投資必勝マニュアル&本

海外投資のノウハウが凝縮! ここで紹介しているコンテンツ、書籍はすべて、ネットから購入が可能です。さらに「海外投資実践マニュアル」は「海外投資を楽しむ会」の会員になれば割引価格で購入可能です。

作家・橘玲のディープなメルマガ
発売即重版決定! 橘玲の最新刊【幸福の「資本」論】発売!
橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
橘玲×ZAiONLINE海外投資の歩き方
作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
subcolumn下影

ページのトップに戻る

本WEBサイトに掲載している全ての記事およびデータについて、その情報源の正確性・確実性・適時性を保証したものではありません。本サイトの提供情報を利用することで被った被害について、当社および情報提供元は一切の責任を負いませ ん。万一、本サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社および情報提供元は一切責任を負いません。本サイトからアクセス可能な、第三者が運営するサイトのアドレスおよび掲載内容の正確性についても保証するものではなく、このような第三者サイトの利用による損害について、当社は一切責任を負いません。また、併せて下段の「プライバシーポリシー・著作権」もご確認ください。