ラップ口座の預かり残高が急増中
売り手の金融機関が熱心な理由は?

 個人向けに、ラップ口座と呼ばれる運用形態が少々流行り始めている。大手証券では、二番手の大和証券がもともと熱心だったが、最大手の野村證券も本格的に注力するようになってきて、ラップ口座での預かり資産残高を急速に積み上げている。また、大手の信託銀行でもラップ口座を扱っている。

 ラップ口座とは、資産の運用管理を証券会社や信託銀行に包括的に任せる仕組みであり、商品の売買の都度に手数料が掛かるのではなく、資産残高に対する手数料をあらかじめ包括的に決めているのが特徴だ。「ラップ」は「包む」という意味の英語から来ており、運用と手数料が一まとめにされていることを指している。

 投資信託を頻繁に売買すると、新たに買う商品の販売手数料がその都度掛かる。金融庁の再三にわたる注意の甲斐なく、顧客が投資する投資信託を別の投資信託に「乗り換え」するよう勧誘する営業行動がなくならない。

 それなら、いくら商品を入れ替えても、新たに販売手数料が掛からないラップ口座の方が安全で安上がりだという長所は一応ある。

 金融機関が急にラップに熱心になった理由の一つとして、投信の乗り換え勧誘営業に対して、監督官庁の監視の目が年々厳しくなってきたことはあるのかもしれない。

 確かに、ラップの場合、売買手数料があらかじめ決まっているから、金融機関側で顧客の預かり資産で過剰な売買を行うインセンティブ(誘因)は働かない。「投信の乗り換え勧誘は諦めた、しかし、ある程度の手数料は確保したい。ラップなら金融庁も文句を言うまい」というあたりに、ラップ口座の売り手側の本音があるのかもしれない。

 ただし、運用を金融機関に任せきりにしていいのかどうか、また、ラップの手数料設定がリーズナブルなものなのかどうか、といった根本的な問題が残っている。

 はっきり言おう。現在、大手の金融機関で注力しているラップ口座での運用はやめた方がいい。以下、ラップの何がいけないのか、なぜラップをやらない方がいいのかを、分かりやすくご説明したい。

 ラップ口座がダメな理由が少なくとも4つある。