社員のモチベーションを低下させた
健康診断受診の強制

 毎年3月が近づくと、人事部から、次のような督促をメールや口頭で受けた経験をお持ちの方も多いのではないだろうか。「あなたは今年度、定期健康診断を受けていません。3月までに必ず受けてください」。

 そして、次のような文言が含まれていることも多い。「定期健康診断は年に1度受診することが義務です」「労働基準監督署へ報告しなければなりませんので、必ず受診してください」「あと○○人受診していない中のお一人です」。

「この日は休め」と言われて嬉しいか?<br />続・有給休暇消化の義務化は国力を損なうPhoto:beeboys-Fotolia.com

 本来、健康診断は企業の社員に対する福利厚生の中でも、最も基本的な、健康維持のためのサービスだ。それが、上記のような督促を受けて、違和感を覚えた社員の方々も少なくないのではなかろうか。違和感が生ずる理由は、社員の福利厚生に関するサービスであるはずの健康診断が、受診義務、報告義務、人事部の提出義務を果たすためのものにすりかわってしまっているからだと私は思う。私が在籍した企業のエンジニアやコンサルタントには「人事部のために受けるなんて、ナンセンスだ」と思っていた人が多かった。

 人事部は、社員の健康維持のためを思って督促しているつもりかもしれないが、上記のような表現では、それが伝わらないどころか、健康診断の押し付けになってしまう。何事も、強制されると反発が生じ、モチベーションの低下につながるものだ。結果、健康診断の受診率の向上に、必ずしも良い結果をもたらさない。