いま世界経済は新しい時代に入りつつある。それを象徴するのが、アメリカ金融緩和の終了と原油価格の下落だ。どちらも、この10年程度の期間にわたって続いた「投機の時代」が終了しつつあることを示している。

 日本はこの新しい世界に適合できるだろうか?

 そのための条件は、アメリカに追随して金融緩和を終了させることだ。金融緩和を継続すれば、1980年代の後半と同じようなバブル経済に突入する危険がある。

原油価格が下落した
基本原因は「投機の終了」

 原油価格は、ここ数年1バレル=100ドル前後で推移していたが、2014年秋以降下落し、15年1月下旬には44ドル台にまで下がった。その後回復したが、15年2月下旬で51ドル程度の水準だ(WTIスポット価格)。

 価格下落の原因として通常指摘されるのは、シェール革命による原油の供給過剰だ。背景にそれがあるのは間違いない。しかし、昨年秋からの急激な下落は、それだけでは説明できない。

 なぜなら、シェール革命はいま急に生じたことでなく、数年来続いていた現象だからだ。アメリカのシェールオイル生産量は、この10年程度の期間に10倍以上になっている。それにもかかわらず、原油価格はつい最近まで上昇を続けていたのである。

 急激な価格下落は、投機資金の動向変化によるとしか考えられない。アメリカ金融緩和が引き起こした投機が終わって、投機資金が原油から逃げ出したのだ。

 1980年代頃までは、原油の売買はほとんどが実需だった。しかし、いまでは、ヘッジファンドなどが、株式、債券などと並んで、商品市場で原油に投資している。原油は重要な投資対象であり、かつ、リスクの高い投機対象だ。2000年頃以降の原油価格の高騰は、こうした資金の動きを考えなければ説明できない。