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クラウド時代にIT部門は不要なのか?

――IT投資動向調査から見えてきた課題

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第37回】 2015年3月6日
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縮小するIT部門の予算決裁権

 昨今、コンシューマーITやクラウドの台頭などにより、非IT部門の主導によるIT支出の割合が増加しているとの見方が出始めている。そこで、今回の調査では、全IT支出のうち、IT部門がどの程度の割合の金額について決定権を有しているかをパーセンテージで問うている。

 まずは、全体の回答結果の分布を前年の調査との比較で見てみよう(図3)。回答の分布状況を見ると、IT部門が支出に対して決定権を有している度合いは、企業によってかなりばらつきがあることが見てとれる。IT部門が決定権を持っていない支出には、製造業の研究所や工場(設計、製造現場)のシステム、小売業の店舗系、倉庫・物流系のシステムなど業種・業態によってさまざまな分野が含まれると考えられる。

 2014年度も前年度同様、最多の分布となったのは「50~75%未満」である。100%、すなわちすべてのIT支出についてIT部門が決定権を持っている企業は14.2%と非常に少なく、2013年の18.5%からも大きく減少している。

 IT部門が支出に対して決定権を有している全回答を平均すると、2013年度は52.7%であったが2014年度は47.9%と5ポイント近く下降した。昨今では、モバイル機器を現場業務で活用する、営業部門の情報共有をクラウドで展開するといった施策がIT部門の管轄外で行われる機会が増えており、企業の全IT支出におけるIT部門の関与度は、今後も下落傾向が続くと予想される。

 IT部門は、既存システムを維持運営しており、全社的な情報セキュリティやITガバナンスの守護神としての役割を担っている。新規ビジネス創出や現場業務改革のためのシステム整備といったIT投資案件はIT部門を通すと、既存技術との互換性、データの連携性、標準化、セキュリティリスクなどの観点から慎重に審議されるため時間を要することが多い。

 一方でビジネスを推進する事業部門は、著しいビジネス環境の変化と競争の最前線にいるため、一日でも早いシステム化を要望する傾向にあり、IT部門の姿勢が保守的に映るであろう。これに業を煮やしたビジネス部門が、外部サービスや直接ITベンダーを活用して個別のシステムを次々と構築していくという事例は増加しており、これは今後避けられない事態といえよう。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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