スティーブン・コヴィー 『7つの習慣―成功には原則があった!』(The Seven Habits of Highly Effective People)でスティーブン・コヴィーが提示した仕事や人生に対する包括的な考え方は、変化の激しい時代に働く悩めるマネジャーたちから、絶大な共感を得た。

 コヴィーは、個人や組織の有効性を左右する自然法則が存在するということと、これに根ざした力を活用して物事を変え、人生のあらゆる側面にこの法則を活かすことの重要性を訴えている。彼の諸作品で繰り返されるテーマは、効果的なリーダーシップとエンパワーメント(訳注:第一線にいる従業員に仕事の判断を任せるマネジメントスタイル)である。

人生と業績

 スティーブン・コヴィーは1985年に設立されたコヴィー・リーダーシップセンター(現在はフランクリン・コヴィー社の一部)と、ユタにある原則重視リーダーシップ研究所(Institute for Principle-Centered Leadersihp)の創立者兼会長である。1932年に生まれ、ハーバードビジネススクールでMBAを取得後、ブリガムヤング大学で博士号を取り、同大学の組織行動および経営学の教授を務めた。

 コヴィー・リーダーシップセンターでのコンサルティング業務(クリントン大統領もキャンプデービッドで彼の話を聞いた)や500万部以上売れた『7つの習慣』(The Seven Habits of Highly Effective People)に代表される彼の著書を通して、彼のメッセージはビジネス界、政府、教育界の何百万人という人々に伝えられてきた。

思想のポイント

●人生を成功させる7つの習慣
 『7つの習慣』が対象としている読者は、マネジャーという立場の人だけでなく、家族の一員や社会的・精神的存在としての個人、あるいは娯楽を楽しみ思索にふける個人としての人間である。コヴィーは「人生を変える処方箋」を提示し、そのためには基本的な前提や習慣などのパラダイムを再検討し、相互依存という基本理念に基いて再構築する必要を説いている。コヴィーは人間の成長過程を以下のようにたどっている。

・子供時代の依存状態(ここから成長できない人も多い)

・青年期の自立(自己の確立、人格の発展、前向きな気概)

・相互依存(共通のゴールに向かって誰もが持てる力量を最大に発揮し、同じ使命やビジョンを共有するが、ゴールを達成するやり方については自分が最善と思う方法を取る自由がある。最高の結果はそのような状態から生まれる)

●第1の習慣:主体性を発揮する
 コヴィーは主体的な人間と受動的な人間を区別する。主体的な人間とは、自分の力で変えられる物事に努力を集中させる人。受動的な人間とは、人を非難したりあら探しをしたり、文句を言ったり被害者のように振る舞ったり、自分ではどうしようもない外部要因(たとえば天気など)に不平を言う人である。

 主体的な人間は自分の人生に責任を取る。コヴィーは責任(responsibility)という言葉を、response(反応すること、特に取るべき反応を選択すること)とability(能力)の2つに分けた。主体的な人間は物事を起こすことが自分の責任だと自覚している。感情に任せて行動をする人は自分の責任を放棄し感情に権限を譲ってしまう人だ。主体的な人間は間違いを犯したとき、間違いをありのまま認識し受け入れるだけでなく、可能ならば間違いを正し、さらに進んで間違いから学習する。