米国の金融システム危機を治癒するには、膨大な金額の税金を投入しなければならない。しかし、それには国民的合意の形成が必要だ。その非常に高いハードルをオバマ政権が越えられるか否かが今後の世界経済にとって最大のポイントとなる。

 「なぜ高給を得ていたウォール街幹部を救済するのか?」という米国民の激しい反発を抑え込まなければ、TARP(不良資産救済プログラム)の予算増額は実現できない。民主主義国家ゆえの難しさが存在している。
 
 民主主義と経済成長の関係を整理したコラムが米セントルイス連銀のウェブサイトに載っている。生徒の勉強の助けになるように、討論のポイントも添えられていた。

 経済学者バローが1960年から90年にかけて100ヵ国を調べたところ、国民の政治的権利が拡大した国において成長が高まっていた。しかし、すでに中程度の民主主義が達成されていた国では、さらなる政治的権利の獲得は、所得の再配分政策経済を招き、成長を鈍化させたという。

 バローの結論は、民主主義の進展は成長にとってややネガティブというニュアンスだが、それと視点が異なる分析もある。ある研究は、政府による富の収奪の抑制と経済成長とのあいだに強い関連性が見られると示している。