数ヶ月に渡り混迷を極めた日本航空(JAL)の再建問題は、企業再生支援機構の支援の下で法的整理により再建に取り組むことで決着となりました。“法的整理”という言葉の響きから、JALにとって非常に厳しい再建策のように報道されていますが、しかし騙されてはいけません。今の再建策は、JALに甘くて国民や金融機関に厳しい内容となっているのです。

あり得ない過剰支援

 JALに対する法的整理については、毎日の報道からは路線や人員の大幅削減などいかにも大規模な荒療治をするように見えますが、本当にそうなのでしょうか。

 JALの再建策については、前原国交大臣が就任直後に任命したタスクフォース(“TF”)が昨年10月の段階で私的整理による案をまとめています。その中身と企業再生支援機構(“機構”)が今回まとめた法的整理の中身を比較してみると、呆れる事実が明らかになります。

 TF案に比べて機構案では、金融支援の額が2500億円から7300億円へと約3倍になっているのです。金融支援とは平たく言えば借金棒引きに他なりません。借金棒引きが突如3倍になり、政府の口利きで借金をチャラにしてもらえるのです。また、JALに投入される公的資金(出資+融資)の額は、4800億円から約1兆円へとほぼ2倍になっています。JALは政府の好意で労せずに安いコストの資金を調達できるのです。

 一方で、リストラの規模はTF案と機構案ではほとんど大差ありません。つまり、JALに対する外科手術の規模は同じなのに、何故か金融支援や公的資金という輸血の規模は大幅に増えているのです。これは、事業再生の世界で言うところの“過剰支援”に他なりません。

 “法的整理”というと厳しいイメージがあります。しかし、機構の再建策の内容は、税金を払わされる国民やJALに融資してきた金融機関などにとっては確かに厳しい内容なのですが、当事者であるJALにとってはすごく美味しい内容となっている、と断ぜざるを得ないのです。