日本郵政の“出来レース疑惑”が、オリックス不動産への「かんぽの宿」売却以外の問題にも飛び火し始めた。

 きっかけは、日本郵政の西川善文社長の腹心の部下に関する国会答弁だ。その部下は西川社長と同じ三井住友銀行の出身で、日本郵政の経営企画担当(専務執行役)の要職にあるにもかかわらず、今なお、三井住友銀行の社宅に住んでいると明かしたのだ。

 取材すると、この部下である横山邦男氏は“退職出向”扱いで、いずれ銀行に戻ることになっている。つまり、三井住友の社員が日本郵政の経営企画担当の専務執行役を兼任し、三井住友の社宅に住み続けているというのである。

 実は、民営化(株式会社化)以降の日本郵政にはかねて、「三井住友グループ偏重」との指摘が存在した。その代表例が、クレジットカード業務への単独進出にあたって、それまでの提携実績を無視して、発行事務を三井住友カードに委託したことだ。このほか、三井住友優遇は、郵便局への備品納入業者の選定などでも囁かれてきた。

 三井住友出身の社長が腹心を一時的な出向の扱いで銀行から呼び寄せ、様々な分野の提携先を銀行やその取引先に振り替えていく。このような利益誘導が、国家プロジェクトである郵政民営化の渦中で行われるのは破廉恥としか言いようがない。

 3月5日の参議院予算委員会。西川社長は声を震わせた。

 「お答え申しあげます。横山君はただいま日本郵政の専務執行役を務めておりますが、(三井住友)銀行員時代から引き続き銀行の社宅に住まわせていただいております」

 なんと驚くべきことだろう。2007年10月の民営化(株式会社化)で日本最大の特殊会社のひとつに生まれ変わった日本郵政の専務執行役、しかもグループの重要戦略の決定を一手に担う経営企画部門を所管する人物が今なお一銀行の社宅に住み、日本郵政の重要な経営マターを決定しているというのだから。

 問題の専務執行役、横山邦男氏は、1981年に旧住友銀行に入行し、長年、企画畑を歩んできた人物だ。MOF担と呼ばれた旧大蔵省の担当を務めたほか、旧さくら銀行との合併交渉では統合戦略室長として実務を一手に引き受けたほど、銀行時代から西川氏の信頼が厚かったとされる。

 そして、2006年2月21日、横山氏は民営化(株式会社化)のための準備企画会社だった「日本郵政」の執行役員に選任された。その当時の担当は、民営化プロジェクトや傘下の事業会社間にまたがる問題を調整するプロジェクトマネジメントチームだった。