チュニジアの首都チュニスの博物館をイスラーム過激派の武装集団が襲撃し、日本人3名を含む20人以上が殺害されました。被害者の多くは地中海クルーズでチュニスに立ち寄り、現地ツアーで博物館を訪れていたといいます。
豪華客船で地中海の旅を楽しむのは安全で快適な旅をしたい旅行者で、彼らには危険な地域に行くという意識はなかったでしょう。富裕な外国人観光客がテロの標的になったのは衝撃的で、この事件でチュニジアの観光業が大打撃を被るのは避けられません。
[参考記事]
●テロ事件は、チュニジアの観光業に大打撃か? -10年前、バリ島テロ直後を振り返る-
エジプトでも今年2月、自爆テロで韓国人観光客3人と観光バスの運転手が死亡しています。イスラーム原理主義者のテロ組織はシナイ半島の「イスラム国」化を目指しているとされ、エジプト在住の外国人に対し、国外に退去しなければ攻撃対象になると警告していました。
外国人観光客に対するテロが卑劣なのは、きわめて“効果的”だからです。外交官やビジネスマンとちがい、楽しむために旅行するひとたちは生命を危険に晒そうなどとは思いません。この事件を受けて自民党の政治家が「行ったらいかんと言われる所は行かんことだ」と発言しましたが、これこそがまさにテロリストの狙いです。
観光業が壊滅し、それで生計を立てていたひとたちが貧困化すれば、社会はより不安定になります。観光客を呼び寄せるには軍や警察が観光地を警備し、ホテルやレストランにも警備員を配置しなければなりませんから、大きなコストがかかります。それによって政府の財政が苦しくなれば、貧困層の不満はさらに高まり、テロ集団はそれを利用して組織を拡大していくのです。
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