橘玲の世界投資見聞録 2015年4月9日

「神に見捨てられた街」南アフリカ・ケープタウン、
ダウンタウンのクリスマスイブ
[橘玲の世界投資見聞録]

 この白人たちはどこからやって来るのだろうか。

 欧米から避寒地としてケープタウンを訪れる観光客も少なくはないが、もっとも多いのはヨハネスブルグやダーバンなど南アフリカの他の都市の住人で、次に多いのはナイジェリアやアンゴラ、ケニアなどのアフリカ各国に住んでいる白人だという。彼らからすれば、クリスマスシーズンの旅行先としては、冬の欧州よりもケープタウンの方が安くて気候もいいのだ。

 アフリカで暮らす白人にとって、ケープタウンは特別な街だ。ベイエリアやワインランドのように、治安を気にせずに自由に歩ける地域は、ここ以外にはアフリカのどこにもない。彼らの生活は、ヨハネスブルグのように、隔離された住宅地から隔離されたオフィスやショッピングセンターへと車で移動するだけなのだ。

 そんなストレスフルな日常から逃れるためにケープタウンにやって来るのだから、黒人ばかりのダウンタウンにわざわざ宿泊する理由はない。それで、観光シーズンにもかかわらず中心部のホテルは格安のままなのだ。

 このようにして、ダウンタウンは徐々に貧困に侵食されていく。

 すでに、ケープタウン駅に隣接するキャッスル・オブ・グッド・ホープ(南アフリカでもっとも古いといわれる城壁で囲まれた建物)や、ロベン島から釈放されたマンデラが最初に演説をした広場グラン・パレード(市役所の隣にある)の周辺は、治安の悪化により、昼間でもツアー以外では近づかないよう注意喚起されている。いちばんの観光名所であるはずの国会議事堂周辺も、旅行者が目にするのは廃人同然になったホームレスたちの姿だ。こうしたエリアが広がっていけば、いずれはヨハネスブルグやプレトリアなど他の都市と同じ状況になってしまうだろう。

 この街(ダウンタウン)が「神に見捨てられた」かどうかはわからないが、すくなくとも「白人に見捨てられ」つつあることは間違いない。

 それでは、ケープタウンに住む裕福なひとたちはクリスマス休暇をどこで過ごすのだろうか?

 たまたま知り合った白人(もちろんベイエリアに住んでいる)に訊いたら、彼はなんでそんなバカな質問をするのか、という顔をした。

 「もちろんアフリカ以外のどこかだよ。黒人がいないからね」

 


<橘 玲(たちばな あきら)>

 作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』(以上ダイヤモンド社)など。中国人の考え方、反日、政治体制、経済、不動産バブルなど「中国という大問題」に切り込んだ最新刊 『橘玲の中国私論』が発売中。
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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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