アベノミクスでは日本病を治せない

 “日本病”とは、海外のメディアが使った言葉ですが、90年代の初めにバブル経済が崩壊した後、長期にわたって経済が低迷していても、景気回復や財政再建ができない日本の状況を揶揄する言葉です。2000年ぐらいまでは「失われた10年」、2010年ぐらいまでは「失われた20年」といわれていました。

 この間の特徴は、短期的な政策である「財政政策」と「金融政策」で景気刺激策を行うことに終始してきたことです。財政政策とは、インフラなどを建設することに資金を使い、景気対策とすることです。インフラへの投資によって景気が良くなるとも考えられましたがその効果は薄かったようです。現在、日本の財政状態は逼迫しており、財政赤字は膨らんでいます。2014年末での財政赤字(政府総債務残高)約1200兆円の内、約4割はこの10年で増えたものです。

 金融政策とは世の中に資金を供給し、金利を下げて景気を刺激する。金利を下げ続け、ついにはゼロ金利となり、さらに量を増やせということで、量的金融緩和が導入されました。しかし、この財政政策と金融政策のフル稼働も、日本病を治すまでには至らなかったのです(米国では量的金融緩和からの脱却を「正常化」としてこの異常事態から早期の脱却を目指しています)。

 金融緩和をしても実体経済が資金を必要しないために、その資金は金融資産市場に流れ込み、現在、ミニバブルの様相を呈しています。金融資産を持つ者と持たない者との間で“格差”も広がりました。

 米国以外の先進国には似たような傾向があるのですが、経済が成熟化するにしたがって経済成長は鈍化し、“年配”の経済になっていくのです。

 通常、経済成長はGDP(国内総生産)の拡大でみます。それは国内でどれだけモノが生産されたか、経済を企業に例えれば、売上が伸びている状態が経済成長している(景気が良い)状態です。逆に景気が悪くなるというのは、企業でいえば売上が落ちていき、手をこまねいていると収益率も落ち、借金が増えていく。社員の給料も下がっていくことになります。行きつく先は“倒産”です。国でいうと“財政破綻”ということになります。こういう流れを、一言でいうと、“衰退”ということになります。