外資系金融機関、コンサルティングファーム、海外著名MBA、投資ファンドなどを経て香港に会社を設立する傍ら作家に転身した「ミスター・サスペンダー」が、他経済媒体で人気を博する『グローバルエリートの母も見た!』の著者であり、投資ド素人でもある母「ミセス・パンプキン」にファンドマネジャー並みの知識を持たせるべく、投資のノウハウを伝授する連載第2回。今回は「儲けてる人が実践する売買タイミング」について。

投資で大儲けする人は
多少儲けたくらいでは売らない

「なんでこの投資、10倍にならなかったんだ? 本来ならもっと儲けられた案件だ。5倍儲かったが、私は非常に不満に思っている」

 これは私のシンガポール滞在時代、現地の代表的な富裕層の投資家であるチャンさん(仮名)に、5倍も儲かった投資先の案件の成功報告に行った時の驚きのやりとりである。

 チャンさんとともに一緒にとあるメーカーに投資して5年ほど保有したのちに見事5倍の収益を生み出し、鼻高々にチャンさんに説明しに行ったときに開口一番怒られたのが、この言葉である。

 5倍も儲かって何十億も稼いだのに、まだ不満なんや……。私はチャンさんの強欲さに閉口したが、その理由を聞いて私はいたく納得した。

短期は損期!?短期売買で破産する投資家たちPhoto:カシス-Fotolia.com

 確かにこの案件は、もっとリターンを出す余地があった。早期にコストカットに踏み切れたはずだし、別の買い手ならもっと値段を払ったかもしれない。途中で不要な投資をしてコストがかさんだのも事実だ。

 しかし私は5倍もの利益を上げたので結果オーライと思っていたのだが、世界の資本市場で投資し、実に投資案件の8割で成功しているという百戦錬磨のグローバル投資家であるチャンさんに言わせれば、“その案件の潜在的な利益を実現しなければ、多少儲かったところでその投資は失敗だ”と言うのである。

 私はこの強欲なチャンさんとの会話から、ふと思い出したことがある。確かに投資で大儲けする人は、多少儲けたくらいでは売らないのだ。

短期的に多少儲けたくらいでも売らないが、ある程度損失が出たら規律を守って売り抜ける。考えてみれば、投資で失敗している人は、まさにこの逆の投資行動をとってしまっていることが多いのだ。