実は、ミシガン大学教授のスコット・E・ペイジの研究からも、ダイバーシティを実現している組織には、そうでない組織に比べ、高いイノベーション力や問題解決力が宿りやすいということがわかっているのです。専業主婦の妻を持つフルタイムの正社員男性ばかりが集まって何かを考えるよりも、多様なバックグラウンド、多様な働き方、多様な視点を持つ集団で何かを考えた方が、どうも良い結果をもたらしやすいということのようですね。

 さて、労働人口の話に視点を戻しましょう。前述の通り、若い人の人口が減っていくことを考えると、これからの日本企業は少ないパイの中でいかに良い人材を数多く確保するかが死活問題となって来るでしょう。性別にこだわる余裕は、どうも無さそうですね。当然、国内だけでなく海外からも優秀な人材を採用する道もあります。では、そうした人材達はどのような企業で働きたいでしょう?上層部を日本人の男性ばかりが占めている企業でしょうか?それとも、性別に関係なく、優秀な人材が意思決定に絡む立場にしっかり存在する企業でしょうか?

 下図は、国際間での、就業者及び管理職における女性比率を比較したものです。ご覧の通り、多くの先進国では女性管理職比率が3割を超えていますね。日本と韓国だけが10%程度という低水準にあります。これは、世界の人々にどう映るでしょうか。企業のグローバル化が進んでいく中で、こうした差がいつまでも続くとは考えにくいです。さらに付け加えると、3割という比率自体にも実は特別な意味があると言われています。経営学者のロザベス・モス・カンターは、これを「黄金の3割」と呼び、マイノリティと目されている人は、その比率が3割を超えるとマイノリティではなくなり、組織全体が変わっていくと言うのです。興味深いですね。

「女性も(いるだけでなく)本当に活躍できる職場である」ということは、今後の人材のアトラクション&リテンション(外部からは優秀な人材を引き付け、内部には優秀な人材が辞めずに留まる)の効果にもつながると考えられるのです。

出所:内閣府・男女共同参画連絡会議 「2020年30%」の目標の実現に向けて
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 改めて、先ほどの高橋部長と斎藤部長の会話を振り返ってみましょう。

 女性の活躍推進は、CSRの観点から世間に非難されないための、守りの施策なのでしょうか?安倍政権がアドバルーンを上げている一過性の「流行」みたいなものなので、とりあえずやり過ごしておけば良い問題でしょうか?やり過ごすための施策として、人事やCSR推進室など、無難な管理部門で何人か女性の管理職を増やしておけば良いでしょうか?ビジネスの最前線や重要な意思決定をするポストに女性を置くなんて無理な話でしょうか?

「2020年までに女性の管理職比率を30%に」。確かにこれは高いハードルかもしれません。でも、稼ぐ力を維持・増強し、新たな一手を打ち販路を拡大するため―。勝つため、生き残るために、攻めの戦略的な施策としてこの課題に立ち向かう意味が、どうもありそうに思えます。それが分からない企業は、淘汰される時代が来るのかもしれません。