自動車のシートなどに使われている素材「アルカンターラ」を製造する伊アルカンターラ社。同社はサスティナビリティを企業戦略の重要な要素として捉えている。その背景を聞いた。

アルカンターラ会長兼CEO アンドレア・ボラーニョ <br />環境保全は競争力の源泉 毎期利益の10%を投資 Photo by Yasuo Katatae

──毎期、利益の10%をサスティナビリティ(持続可能性)のために投資しています。きっかけは何だったのでしょうか。

 2008年のリーマンショックがきっかけでした。世界経済が壊れ、構造が大きく変わる過程で、私たちは新しいビジネスモデルや戦略、強みを考える必要がありました。

 そのときに私たちが掲げたのがサスティナビリティ。10~15年前は、サスティナビリティというと企業の社会的責任で、それはコストだという考え方が主流でした。しかし、私たちはビジネスプロセスの中に組み込み、戦略の一部として捉え直すことにしたのです。

 まず全製造工程を見直し、どうしても排出してしまう二酸化炭素については、それに相当する量をオフセット(相殺)するために、国連が推奨する地球環境保全のプロジェクトを支援することにしました。12年にはケニアのライフストロー水力発電所やベトナムのダクポン水力発電所などの建設を支援しました。09年にはイタリア初のカーボンニュートラル企業として認証を取得しています。

──しかし、そうした活動の具体的な成果を得るには時間がかかります。株主、顧客、従業員などのステークホルダーは、短期的な成果を求めるのではと思います。