かつらメーカー最大手として知られるアデランス。近年はミノキシジルやフィナステリドといった男性型脱毛症(AGA)治療薬の登場が大きなインパクトとなり、毛髪業界全体で男性向けかつら(ウィッグ)の需要が伸び悩むなど、新たな市場拡大・商品開発を迫られてきた。しかし同社は、2015年度売上高767億円と、前年より約90億円も売上を伸ばしている。市場が大きく変化するなか、同社が売上を伸ばしている背景には何があるのか。津村佳宏営業本部長に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 林恭子、撮影/宇佐見利明)

今や女性向けが7割に
男性市場が横ばいの背景は?

――創業から47年目、この数十年で毛髪業界はどう変化してきたのでしょうか。

薄毛治療薬の登場で、<br />アデランスはどう戦略を変えたのか今では女性向けのウィッグブランド「フォンテーヌ」が売上を伸ばし、同社売上の7割を占めるほどに

 アデランスは男性用ウィッグでスタートし、歴史を重ねる中でウィッグのみならず、ヘアケアや育毛の展開をはじめ、最近では女性からの需要も増えてきました。

 女性向けにはフォンテーヌというブランドで40年以上、百貨店や商業施設を中心に既製品ウィッグを展開してきましたが、ここ15年~20年近く前から女性需要がさらに拡大し、オーダーメイドウィッグを求める方が増えています。そこでレディースアデランスを立ち上げ、今では女性向けの商品の売上が弊社全体の7割近くを占めるほどになりました。実際、日本の毛髪市場は約1370億円と言われるなか、女性向けが706億円を占め、市場全体でも男性を上回ってきています。つまり、10年ほど前から男性と女性の割合が逆転している状況です。

薄毛治療薬の登場で、<br />アデランスはどう戦略を変えたのかアデランス・津村佳宏 取締役 営業本部長

 その理由の1つが、ウィッグを求める女性ターゲット層の変化です。これまでウィッグのお客様といえば、薄毛や白髪のお悩みを持つ60代以上の方がほとんどでした。しかし最近では、「おしゃれ」としてウィッグを使う40~50代の方も増えています。高齢社会のなかで団塊世代を中心としたアクティブシニアが、ファッションを楽しんだり、出かける機会も増え、ファッションとして髪を整える重要性が高まっているのだと考えています。

 競合他社でも積極的に展開をはじめ、女性用ウィッグショップがGMS(大型ショッピングセンター等)などを中心に増加しています。そんななかで弊社は、百貨店を中心にフォンテーヌを約180店舗、スワニー、ルネオブパリスというブランドをGMSで約35店舗展開し、女性向けに関しては業界全体の42%のシェアを取っています。