アラブ 2015年5月28日

教えて! 尚子先生
アラブとアジアのイスラム教では、同じイスラム教でも違いがあるのでしょうか?【中東・イスラム初級講座・第23回】

なぜ、東南アジアのイスラムはゆるくみえるのか?

 このように東南アジアでもイスラムが広められていったのですが、東南アジアのいわゆる“ゆるくみえる”イスラムと、中東の厳格そうなイスラムでは何が異なっているのでしょうか? 

 実は、東南アジアのイスラム教徒も大部分はスンナ派(スンニ派)で、コーランもアラビア語のままです(第21回「イスラム教とは何ですか?」参照)。

 厳密な分類でいうと、インドネシアのイスラム教徒の多くは、スンナ派の4大法学派の1つであるシャーフィーイー派に属しており、この宗派は東南アジアや東アフリカ、イエメン、インドに多いといわれています。つまり、東南アジアのイスラムも他のイスラムも原則的に差異はないのです。

 もちろんイスラムがメッカから世界各地に伝播していく中で、その地域の伝統や文化をまったく吸収しなかったわけではないでしょう。インドネシアやアフリカなど多神教が本来強かった地域と、ユダヤ教やキリスト教といった一神教がすでに根づいていた地中海岸では、地元の人々の吸収の仕方や定着の方法に差異があったにちがいありません。

 けれども、ここで「原則的に差異はない」という説明をしたのは、それ以上に、現在のイスラム教徒は国家のあり方によって、イスラム教徒の生活のあり方が変わってきているからです。

 わかりやすい例でいうと、イランやサウジアラビアのように国家が厳格にイスラム教を国教として採用し、イスラム法を施行している場合は、すべての女性にヘジャブやチャドルを着せるような政策を採用することもできます。

 一方、インドネシアなどのように国教と制定していない場合や、国教と指定していても国家が厳格にイスラム法を導入していないエジプトやヨルダンのような国の場合は、国家が宗教を理由に個人を取り締まってはいません。言い換えるなら、現在ではイスラム教徒の差異は、国家のあり方に左右される場合が多いのです。

 もちろん、東南アジアにも厳格で敬虔なイスラム教徒は存在しています。文献によれば、インドネシア人同士でも初対面の場合、敬虔で厳格なイスラム教徒なのですか?とまずたずね、次にインドネシア・イスラムの中のいわゆる伝統派と近代派のどちらを支持しているのかをたずねるのだと書かれています。

 つまり、知らない相手を尊重するために、まずは宗教的厳格さを問うことによって、飲酒の有無や食さないものを判断し、つぎに支持派閥をたずねることでおおよその思考を想定して、避けるべき話題を考えていくということなのでしょう。

 先に説明したように、インドネシアの場合、大半がイスラム教徒であるにもかかわらず、イスラム教は国教ではありません。ですが実は、1945年のインドネシア独立の際に、イスラムを国教として制定すべきか否か、つまり「ムスリムはイスラム法に従わなければならない」という一文を憲法に入れるべきとして最後の最後まで議論されていたのだそうです。

 そして、この一文は土壇場で削除されたというのです。最終的には、インドネシアは「パンチャシラ」とよばれる5原則<唯一神への信仰、人道主義、国家統一、民主主義、社会正義>を掲げて独立し、現在でもこの原則は憲法で規定されています。


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