大相撲人気底上げの一因に力士の「ゆるキャラ」化!?

 いま、世間ではかなり久しぶりに大相撲全体が盛り上がっております。今年1月には、ついに本場所の全15日が「満員御礼」となりました。両国国技館では18年ぶりのことだそうです。特に女性人気の上昇は目立ち、大相撲ファンとしてだいぶ名が通ってきた(と自負している)私は最近「人気の秘訣は何でしょうか?」とよく聞かれます。

 しかし、はっきり答えられる要因が見つからなくて困っています。

 若貴時代の全盛期は、若花田・貴花田・曙などのカッコいい、あるいは個性あふれる若手が台頭して力士が世代交代し、ミーハー的な人気もありました。一方で今は、遠藤や逸ノ城が若貴ほどの人気があるかというとそこまでは及ばないし、世代交代もまだ起きていない。ここのところは毎場所のように白鵬が優勝していて、優勝争いという面ではむしろあまりおもしろくない。では白鵬・日馬富士・鶴竜といった横綱陣がカリスマ的な人気を誇るかというと、そこまででもない。

 つまり、明らかに一部の個人の人気ではないのです。大相撲全体がなんとなく底上げされている、なんとなくブームに乗っている、というように見えます。

 思えば4年前、八百長事件によって3月場所は戦後初の「中止」となり、その次の場所は「技量審査のための場所」として無料公開になり、NHK放送は取りやめになった。この時、大相撲は戦後最大のピンチだったと思います。ただでさえ人気の高くないところへひどい悪評。本当に大相撲が終わってしまうんじゃないかと私は危惧しました。

「かわいい」の声に応える相撲協会

 そのとき、NHKの代わりに中継したのがニコニコ生放送でした。解説などはないものの、なんと朝8時頃から延々生放送するという、これもまた初の取り組み。落ち込んでいた私は、午前中から大相撲中継が見られるなんて、とむしろ歓喜しました。

 ニコ生で大相撲を見ていると、まるで友達と現場で酒を飲みながら観戦しているかのように、画面上にさまざまなコメントがザワザワと書きこまれます。斬新なようで、これはまさに旧来からの大相撲の楽しみ方そのもの。その相性の良さに驚きました。

 ほかのスポーツと比べるならば、野球やサッカーの場合は片方のチームへの肩入れが強すぎ、コメント欄が荒れやすいでしょう。ほかの芸能(歌舞伎や狂言など)と比べるならば、そもそも喋りながら見るという文化ではありません。飲み食いしながら雑談してお祭り気分で見る大相撲は、ニコ生というシステムにぴったりだったのです。結局15日間で、なんと延べ160万人がアクセスしたとのこと。災い転じて福となすという形で、奇しくも大相撲というコンテンツはニコ生に合っていることが証明されました。