また、サービスを最低限にとどめ、価格を抑えていることも、「観光はしたい。だけど、あまりお金はかけたくない」という人にとっては大きな訴求力になる。家族旅行や観光においても、ビジネスホテルに宿泊することが悪くない選択肢だと、多くの人が気づき始めたのだ。

 つまり、ビジネスホテルが出張族だけのものだった時代は終わりを告げ、旅行客も積極的にビジネスホテルを利用するようになっている。これは宿泊旅行統計調査からも見て取れる。昨年一年間でビジネスホテルに宿泊したのはのべ1億6138万人。旅館に宿泊したのはのべ8373万人なので、ビジネスホテルの約半分だ。リゾートホテルやシティホテルといった業態も年間を通じて、ビジネスホテルの2分の1から3分の1程度の宿泊客数で推移している。客数を見る限り、ビジネスホテルの一人勝ち状態だ。

 家族連れやカップルなどの利用増加にともない、ビジネスホテルも新たな客層に向けたサービスも提供するようになっており、それがさらに客を呼びこむ。

 ビジネスホテルのにぎわいにさらに拍車をかけているのが外国人観光客だ。2013年の訪日外客数は1036万人となり、関係者一同が長年の悲願としていた年間1000万人を初めて突破した。日本政府観光局のデータでは、2014年にも29%増で1341万人が日本を訪れた。

 この訪日外客数を地域別に見ると、その成長が著しいのがアジアからの観光客。2010年に35.6%増、東日本大震災により11年は急速に客足が遠のき-27.6%だが、12年に35.2%、13年に27%、14年に33.3%増加と、とどまるところを知らない。

 日本観光がブームになり、富裕層だけが訪れるのではなく、多くの中間層が日本に押し寄せている。そのときに、宿泊先として選ばれるのは豪華なホテルよりも、安価なビジネスホテル。国内外の観光客が殺到すれば、混雑も当然だ。直前に出張が決まり、あわてて予約をしようにも、一等地は既に観光客でいっぱい。それが現在のビジネスホテルなのである。