2015年3月期決算で営業利益632億円と過去最高益となったIHI。好決算に貢献したのは、民間航空機エンジンだ。長らく日の目を見なかった事業が頭角を現しつつある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)

 東京都西多摩郡。5月11日、米軍横田基地の隣にあるIHI瑞穂工場では、欧州エアバスの最新型旅客機「A320neo」のエンジンに搭載される低圧圧縮機の量産第1号が出荷された。瑞穂工場はこれから、フル稼働の時を迎える。

 IHIは、2015年3月期に営業利益632億円の過去最高益となった。好決算に最も貢献したのが民間航空機エンジンのビジネスだ。防衛システム事業など他の分野も含むが、「航空・宇宙・防衛」セグメントの営業利益は395億円。連結営業利益の6割を占めている。

 航空機エンジンの業界は、極めて閉鎖的だ。業界に君臨するのは、ビッグスリーと呼ばれる米ゼネラル・エレクトリック(GE)、米プラット&ホイットニー(P&W)、英ロールス・ロイス(RR)の3社。彼らが、主導的な立場でエンジンの開発を行い、米ボーイングやエアバスといった機体メーカーへ納入する。

 近年、エンジンの開発費が莫大な金額に及んでいることから、ビッグスリーは、RSP(リスク・シェアリング・パートナー)と呼ばれる方式を採用し、リスク分散を図っている。一つの開発プロジェクトにパートナー(サプライヤー)を参画させることで、その参画度合い(出資比率)に応じて開発費・作業を負担するやり方だ。

 そのパートナーとして、存在感を発揮しているのがIHIだ。冒頭の「A320neo」向けエンジンはP&Wの『PW1100G‐JM』。このプロジェクトにIHIは15%出資している。

 航空機エンジンのビジネスモデルは特殊だ。一般的には、開発に着手してから投資が回収できるまで、早くて15年もかかる。

 特に、開発初期は開発費用がかさむ上、「機体メーカーが注文してくれるまで8割引きでエンジンを売る」(機械メーカー幹部)投げ売り状態。それでも、本格増産期に入れば、生産コストの軽減が進み、初期に納入したエンジン向けのパーツビジネスも軌道に乗る。息の長いビジネスなのである。

 航空・宇宙・防衛セグメントの営業利益率が15年3月期に9.1%と好転しているのは、「A320」向け『V2500』などロングセラーのエンジンが次々に投資回収期に入っているからだ。