ドイツは「うまみ」を謳歌してきた
それが忘れられている

ギリシャ問題の解は「ユーロ離脱、EU残留」

 ギリシャのデフォルトの可能性が高まっている。7月5日の国民投票で、財政緊縮策を受け入れるかどうかが判断される。このため、世界各国の金融市場は大騒ぎだ。短期的に見れば大混乱であるが、ちょっと長い歴史と経済理論から見れば、今回のデフォルトはよくあることで、その結果、ユーロ離脱になっても別に驚くことではない。

 本コラムはバックナンバーでさかのぼれるので、筆者の論考にどれだけ妥当性があるかを検証できる。今から3年半前、2011年10月20日付けの本コラム「ギリシャはデフォルト(債務不履行)常習国 歴史と最適通貨圏理論で解く問題の本質」では、ギリシャ問題の本質として、過去2年に1回デフォルトになっているギリシャの特殊性と、同国がノーベル経済学賞を受賞した経済学者マンデルによる「最適通貨圏」から逸脱していることを示している。

 さらに、その最後には「政治的には難しいだろうが、経済的な抜本策はギリシャのユーロからの離脱しかない」との結論を下している。

 マンデルの「最適通貨圏理論」はいろいろと示唆に富む分析を提供してくれる。

 ドイツなどのユーロの中心国では、ギリシャなどの周辺国が増える「うまみ」もある。欧州中央銀行(ECB)の政策金利は、ユーロの物価指数に占めるドイツなどのウェイトが高いため、それらに合わせて過去低めに設定されている。このため、ギリシャなどの南欧の景気が過熱し、そのインフレ率はECBが域内の物価安定の目安とする「2%未満」を上回ってきた。

 同じユーロ国でも、インフレ率が相対的に低いドイツの輸出製品価格は低く抑えられる一方、インフレ率の高いギリシャなどの輸出製品は価格競争力を失っていく。このため、ドイツなどの輸出は急増し、その果実を謳歌してきた。ギリシャ問題では、ドイツなどは援助国、ギリシャなどは非援助国という構図であるが、それまではドイツなどはユーロ拡大の最大の受益国であったことは忘れられている。

 ギリシャ問題とユーロとの関係について、知見があるかないかでは、この問題に対する見方がまったく異なってくる。

 日本のマスコミでよくあるステレオタイプは、ギリシャは公務員が多く、年金水準も高いので、財政が破綻するというものだ。このため、ギリシャと同じにならないように、日本でも財政再建が必要で歳出カット、増税が必要という主張になってくる。この種の話は多く、不勉強なテレビのコメンテーターがしばしば述べる。また、財務省がマスコミやコメンテーターへのレクの時に、ささやくともいわれている。多くの政治家も騙されている。