トヨタとスズキの緊急会見から<br />「二大創業家」が迎えた転機を読む会長CEOに鈴木修氏(右)、社長COOに鈴木俊宏氏が就任し、新体制がスタートしたスズキ
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期せずして相次いだ緊急会見
トヨタとスズキに何が起きた?

 6月、自動車業界で緊急会見が相次いだ。

 1つは、6月30日のスズキ社長交代会見、もう1つはそれを遡る6月19日に行なわれた豊田章男・トヨタ社長の謝罪会見だ。

 その会見内容は全く別ものだが、奇しくも両社は創業家をトップに置く日本の代表的な自動車メーカーである。トヨタの豊田家、スズキの鈴木家、共に織機(織物機械)から自動車メーカーへと業態を変えた企業としての歴史も似ている。

 創業家をトップに戴くトヨタとスズキに、今何が起きているのか。両社はこれからどこへ向かうのか。今回は、それぞれのトップによる緊急会見から、「二大創業家」が迎えた転機を読み解こう。

 まずはスズキだが、今回、自動車業界最長老の鈴木修会長兼社長が、長男である鈴木俊宏副社長の社長昇格を決めて、記者会見に臨んだ。俊宏氏は、スズキの前身となる鈴木式織機製作所の創業者、鈴木道雄氏からの創業家出身者となる。

 鈴木修氏は、言わずと知れたスズキのワンマン経営者。1978年の社長就任来、実に37年に及んでトップを務め、「俺は浜松の中小企業のおやじ」と言いながら日本の軽自動車をここまで育て上げた。インド市場での高シェア・高収益を確立させた経営力は、つとに有名である。

 スズキは、株主総会の最盛日だった6月26日に浜松で株主総会を行った後、30日に臨時取締役会を開き、スズキ創業家の鈴木俊宏副社長(修氏の長男)の社長昇格を決めた。会長CEOに鈴木修氏、社長COOに鈴木俊宏氏という新体制で、東京のホテルにて会見に臨んだ。今回のスズキの社長交代に関しては、メディア関係者は30日午後、スズキから突然の記者会見案内が送付されて社長交代を知ったのである。

 ただ裏側から見ると、自他ともに認めるスズキのワンマン・鈴木修氏の胸三寸で長男俊宏氏へ社長が禅譲されるのは、時間の問題とされていた側面もある。鈴木創業家は女系だ。二代目社長の鈴木俊三氏が先代の娘婿で、その俊三氏に見込まれ娘婿としてスズキ入りしたのが鈴木修会長である。