上場企業となれば、株主に対して成長を約束していかなければなりません。そのような立場から、もう一つの活動として「投資銀行が自らの資産を使って投資する」(プリンシパル投資)という新しい動きが出てきました。実はこちらのほうがアドバイスするより儲かったことから、世界中の投資銀行がプリンシパル投資を手掛けるようになりました。平たく言えば、「顧客にとって、確実に儲かる良い案件なのだけど、顧客が買わないのならば、自分たちで買ってしまおう」ということです。この辺が「投資銀行は自分で投資するから投資銀行と名乗っている」という世間の誤解につながっているのですが、本来の意味では違います。そして、この2つの異なる立場が同じ組織内に共存するということは、自分たちで「業務の線引きは明確にしています」と言っても、かつて米国で問題視されたように、顧客の目から見れば“利益相反”と映るはずです。

 そういう事情から、GCAはM&Aという分野に特化した助言会社に徹することを再確認し、もともと「自分で投資を手掛けてみたい」と思考していた佐山氏は投資ファンドという別の方向に進むことになりました。背景には、08年秋に起きたリーマンショックの前まで、米投資ファンドのブラックストーン・グループなどの調子がよかったということもあります。これは、どちらが良い悪いということではなく、あくまで考え方の違いだったのです。

M&Aという行為を通じて
イノベーションを取り込む

──なるほど。では、現在のGCAサヴィアンが行っているM&Aの助言会社という業態は、どのようにして収入を得ているのですか。

 一口にM&Aの助言会社と言っても実際の仕事の内容は複雑で、1つとして同じケースはありません。毎回、真剣勝負の連続です。

 これまでに1000以上のM&A案件を手掛けてきた例で言えば、①できるだけ会社を高く売りたい人と、②できるだけ会社を安く買いたい人、のどちらかの立場になって交渉を進めていきます。こう言うと簡単に聞こえますが、実際には相当に骨の折れる専門性の高い仕事です。そして、晴れて案件が成立した時に、フォーミュラ(算定方式)に従って数%の成功報酬をいただきます。

 日本には、不動産の仲介会社のように、①と②をマッチングさせて双方から仲介手数料をもらう企業もありますが、私たちは必ず①か②のどちらかからしかいただきません。とりわけ、近年のクロスボーダー案件のように仕事のスケールが大きくなれば、私たちの収入は増えます。ですが、「どのようなサポートがクライアントにとってベストなのか」という存在意義は守り続けていますので、拡大主義で社員に数字のノルマを課すということはしません。むしろ、質のほうが重要です。おかげさまで、顧客のリピート率は80%を超えています。

 私たちの大きな特徴としては、どこの金融グループにも属していない独立系という点があります。ですから、M&A以外の金融取引の機会を増やそうとは考えませんし、顧客の立場に徹した必要なサポート体制を組み立てられます。

──しかしながら、M&Aという手法が当たり前に定着している欧米の状況と異なり、日本では「一般的にM&Aの50%くらいは失敗している」というネガティブな印象があります。実態は千差万別でしょうが、日本におけるM&Aの第一人者としての立場から、どのように考えていますか。

 私から見れば、日本企業によるM&Aの90%以上が“成功”となります。