ベトナム 2015年7月21日

ベトナムが迎えた40回目の南部解放記念日
ハノイ、ホーチミン、そして在米越僑、それぞれの思い

「南北統一は全国民の悲願だった」という北部

 これが北部のハノイとなると、若干、様子が変わってくる。先日、ハノイに出張した際、ベトナム人の若い日本語ガイド数人に、4月30日の話を振ってみた。すると、
「南北統一は、全ベトナム国民の悲願でした。だから北ベトナム軍が、サイゴンに入ると、市民はみんな歓喜の涙を流しながら歓迎したのです」
と熱っぽく話してくれた。

 私が話をしたのは、いずれも30代の人間だったので、もちろん、実際に現場を見たわけではない。それでも、彼らにとっては、4月30日は「輝かしい日」なのである。

 「南部の人は、もう少し違った受け取り方をしているんじゃない?」
と話を振ってみたのだが、彼らは、
「僕らも、ツアーの仕事でしょっちゅうホーチミンシティには行きますし、南部の友人もいますが、みんな南北が統一されて良かったと言っていますよ」
とまったく動じない。

 彼らは「南北統一は国民の悲願だった」という点に、まったく一縷の疑いも感じていないのだ。南部の人間が、北部の彼らに対して本音を隠しているのか、もしくは北部の彼らも南部の本音を知りつつ、外国人に対して優等生としての回答をしているのか。それとも、私が話をした何人かが、たまたまこういう考え方の持ち主だったのか。南部人である私には、そこまでは分からなかった。

南ベトナムの国旗を掲揚し続けるリトルサイゴンの住人

 北ベトナムによる南北統一に関して、もっと強硬な反対姿勢を示している人たちがいる。それはベトナム戦争終結と相前後してアメリカに亡命したベトナム人たちだ。

 私がカリフォルニア州オレンジカウンティにあるベトナム人コミュニティ・リトルサイゴンを訪れたときには、まず町の中に掲揚されている国旗が、南ベトナムの国旗であることに驚いた。

 私が話を聞いたリトルサイゴン在住のベトナム人ジャーナリストの中には、
「我々は、北ベトナム政府を、正統な政権継承者とは認めていない。南ベトナムこそが、正統なベトナムである。北ベトナムによる不当な占領状態から、祖国を解放するまで、我々は諦めない」
と言う人までいた。

 「ベトナム移民の街」という言葉から、比較的貧しい人たちが住んでいるのかという先入観を持っていたが、リトルサイゴンは、日本人である私の目で見ても「高級住宅街」だった。

 ホーチミンシティで、いちばん近代的で美しいとされる7区ですら、太刀打ちできない。ベトナムに残った人たちより、国を捨てて他国に亡命した人たちの方が、生活レベルが格段に高い……。

 街の様子を見ていると、私の周りのベトナム人が、アメリカ移住を夢見るのも当然かと思う。もちろん、移住すれば豊かになれるという保証は、どこにもないにしても、である。私は何とも言えない複雑な心境になった。

ベトナム人移民の街・リトルサイゴン。掲揚されている旗のうち、いちばん左の黄色に赤いラインが南ベトナムの国旗だ【撮影/中安昭人】
リトルサイゴンの情景。このような一戸建てがゆったりとした敷地の中に建っている。リトルサイゴンの中では、英語は必要なく、すべてベトナム語で用が足せる【撮影/中安昭人】

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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