ユニゾンによるアデランスへのTOBに関して、メディアでは友好的な報道が多い。悪役スティールパートナーズに対してのホワイトナイト登場というトーンだ。ユニゾンの今回のスキームはある意味の株価操縦であるという指摘はザイ・オンラインでしたところであるが、こちらのコラムでは、当該スキームでさらりと組み込まれている金庫株の処遇を中心に、スキームの是非を問うてみたい。

金庫株は誰がためのもの?

 ユニゾン&アデランス経営陣連合は、次の株主総会で彼らが提案する取締役候補者が可決されれば、その後ユニゾンによるアデランス株へのTOBを実施すると発表している。そして、そのTOBには、アデランスが保有する7%強の金庫株が応募する予定だと書かれている。

 アデランスの株主構成を確認すると、この金庫株というのは第4位の立派な大株主であることが分かる。今回のユニゾン&アデランス経営陣連合軍のスキームには、大株主のスティールパートナーズは反対の姿勢を示しており、少なくともスティールにとっては金庫株をこのように経営陣の都合のいいように処分されたのではたまったものではないはずだ。

 そもそも自社株買いとは、株数を減らすことによりすべての株主の一株当たり利益を増加させることにその目的が存在する。しかし、今回のように自社株買いで吸い上げた自己株を経営陣にとっての都合のいい先に割り当てるのは、半ば経営陣の保身のために行われる行為であり、決してすべての株主にとって歓迎できるものではないだろう。

 自社株買いを行った時点で、理論的には発行済み株式数は減少する。よって金庫株を再び放出するのは、実質的に新株発行と同じである。それを誰か特定の人(ユニゾン)に割り当てるのであれば、それは第三者割当増資と何ら変わりない。

金庫株のTOBへの応募は
実質的に第三者割当増資ではないか

 第三者割当増資に関しては、現状は取締役会の決議のみで実施できてしまうため、東証も問題視しており、「上場制度整備懇談会」でそのあり方や是非について議論してきたところである。そして、新聞報道によると来月末あたりに結論が出そうとのことだ。基本的な考え方としては、「大規模な新株発行による第三者割当増資で、不利益を受ける既存株主の権利保護を強化する内容となっている」(4月16日毎日新聞)とのことである。