構想18年、製作費100億円。長らく、困難だと考えられてきた『三国志』の映像化に、アジアの巨匠ジョン・ウー監督が取り組んだ。『三国志』の人気エピソード「赤壁の戦い」を題材にした映画「レッドクリフ」は、超ド級の迫力で1800年前の戦争と人間を描き、日本で公開されるや否や大ヒットを続けている。そんなジョン・ウー監督は、この映画を「ぜひ日本のビジネスマンに見て欲しい」と力説する。

ジョン・ウー(呉宇森)
ジョン・ウー(呉宇森)/映画監督 1946年、中国・広州市生まれ。香港で育つ。73年、「カラテ愚連隊」で監督デビュー。86年、「男たちの挽歌」は、香港ばかりでなく、日本でも大ヒットした。その後、活動の拠点を米ハリウッドに移して、「フェイス/オフ」「M:I-2」などを手がける。(撮影/宇佐見利明)

――これまで、監督は、数多くのアクション映画を通して、“忠義”や“仁義”の世界を描いてきました。今回、『三国志』を映像化するに当たって、そこにどのような新しい要素を盛り込みましたか?

 確かに、過去の私の映画では、その2つの要素を一貫して描いてきました。今回の映画「レッドクリフ」では、そこに団結、友情、知恵、ロマンの要素を加えました。そして、さらに、「人生に対して、希望を捨ててはいけない」というメッセージも込めました。

――「希望を捨てるな」とは、どういうことですか?

 人間が生きているということは、とても有意義なことです。

 たとえば人間は、誰かと知り合うことで仲間になり、互いの長所や短所を評価し合います。そして、心を開いて交流することで、互いを思いやり、感謝したりする気持ちが生まれます。そのような絆や友情は、人生で直面するあらゆる困難に立ち向かっていく際のベースになります。

 私は、世の中に対して希望を失って沈んだ気持ちになっている人たちに対して、この映画を捧げることで、彼らを励ましたいと考えています。人間は、一緒に手を携えて協力すれば、困難を克服できるのです。孤独ではないのです。

趙雲の取った行動は
武士道精神に似ている

――映画の中では、劉備軍と孫権軍が一致団結して、天下統一に乗り出した帝国最大の曹操軍に立ち向かいます。

 80万人の兵士と2000隻の戦艦を率いて攻めてくる曹操軍に対して、降伏を拒んで団結した劉備軍と孫権軍は5万人の兵士しかいません。この圧倒的な兵力の差に対抗するには、皆の気持ちを1つにして、知恵と勇気を振り絞る必要があります。