フィリピン 2015年8月21日

フィリピンでビジネスする日本人がはまる不法就労の落とし穴

不法就労のボーダーライン

 上記の通り、SWPあるいはAEPがフィリピンで就労するうえでの前提となるのだが、就労という定義が必ずしも明確ではない。

 フィリピンのいずれかの会社に雇用されて報酬を得る、というのがその基本的定義だが、下記の場合など、AEPが必要であるのかどうか判断が難しい。

(1)親会社から派遣されて、フィリピン子会社の現地社員の技術指導を行なうために駐在している。会社同士の契約で、トレーナーの派遣は親会社の無償提供となっており、トレーナーには子会社から給与等は支払われない。

(2)親会社から派遣されて、ダミーのフィリピン人社長に成り代わって会社の経営を行なっている。社長等のポジションには法律上つけないので、役員の肩書きだけで、日本とフィリピンを行ったりきたりしながら会社の経営を行なっている。もちろん、子会社から報酬は受け取っていない。

(3)日本人を対象に営業活動を行なって、不動産等の購入客をデベロッパーないし所有者に紹介して、口銭をもらっている。ただし、口銭は日本の会社/個人に支払われ、個人的にフィリピン内での金銭の授受はない。営業はインターネットでやっているが、活動の中心はフィリピンだ。

 従来、就労か否かの境界は、フィリピンでの報酬の存在だった。報酬さえなければ問題なかろうと考えていたが、直接報酬は支払われていないとしても、実質的に就労しているのであれば話は微妙だ。

 仮に報酬が海外で支払われているとしても、その報酬の根拠がフィリピンでの就労である場合、報酬ゼロということにはならない。しかし、海外で報酬が支払われている証拠をつかむことは、入管にとっては至難の業だろう。

 ポイントは、会社においてマネージャーなどの地位を持たないことと、その地位がゆえの会社書類に署名しないことだ。それらの存在は会社に所属し、就労をしているという証拠になり、言い訳がたたない。要は証拠を残さないことが肝心だった。

摘発されれば収監されて犯罪者扱い

 しかし最近、ややこしい状況が発生している。先日、数百人規模の不法就労の中国人建設労働者が摘発され、入管は不法就労の取締りを強化すると宣言した。そして密告を奨励し、報奨金まで支払っているらしい。

 中国人や韓国人の中には、フィリピンの法律に無頓着で順法精神など持たない人もいる。だからフィリピン人社員に密告を奨励して、実態をつかもうという作戦だ。そうなると、いくら見せかけを繕っても、就労しているかどうかはそこで働いている社員には一目瞭然で、密告されたらひとたまりもない。証拠書類も知らぬ間にかき集めて、報奨金目当てに入管に駆け込むだろう。

 普通のフィリピン人はこんな密告はしないが、何らかの原因で個人的に恨みを抱いたり、クビになったりしたら、それがたとえ逆恨みだとしても入管への密告という事態になりかねない。

 入管に密告されると、まずは入管から通告が来て、不法就労の密告するに対する言い訳をするよう求められる。けっして就労ではないと言い訳をするわけだが、内部密告となると敵も証拠を押さえていて、なかなか容易ではない。そのときからこの辺に詳しい弁護士を雇って対処すべきで、後になればなるほど事態はややこしくなる。

 無事に無罪となればめでたしめでたしだが、有罪となると、収監→保釈金を積んで出獄→国外退去とまさに犯罪者扱いだ。当然、ブラックリストに載せられて、その後のフィリピン入国もままならない。

 こんなことが起きないように、けっしてフィリピン人社員には恨みは買わないこと。そして弱みは持たないことがフィリピンでビジネスをする上での鉄則だ。就労とみなされる恐れがある場合、あるいは何らかの報酬を受け取る場合、面倒がらずSWPあるいはAEPの取得を行なうのが転ばぬ先の杖というものだ。

道路いっぱいに商品が並べられたマーケット (Photo:©Alt Invest Com)

(文/志賀和民)

著者紹介:志賀和民(しが・かずたみ)
東京出身。東北大学大学院修了後、日揮(株)入社。シンガポールをかわきりに海外勤務を歴任。1989年日揮関連会社社長に就任しフィリピンに移住。2007年4月PASCO(サロン・デ・パスコ)取締役。

 


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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