退職した元同僚らは、岩上のことを「〇〇さん(創業社長のこと)がいなければ、単なるおばさん」と揶揄する。

「数億円を握って、ベンツを乗り回して出社する。だけど、仕事はできない。印鑑を押すだけ。それでも、私たちよりもはるかに金持ち」

「辞める、辞める、と騒いでいるけど、まだずっといるよ。あの人は『辞める、辞める詐欺』だから……」

 新社長となった男性が、いつ、岩上に引導を渡すかが社内や退職者たちの間での、静かなる話題となっている。

 岩上の思いは変わらない。社長になりたい。だけど、なることができない――。いつまで、こんなバカの男たちを支えないといけないの――。


タテマエとホンネを見抜け!
「黒い職場」を生き抜く教訓

 今回登場した女性役員は、会社や社長、そして男性社員の心理について、タテマエとホンネを見抜いているように思える。筆者が女性から感じ取った教訓は、次の通りだ。似たような境遇にいる読者は、参考にしてほしい。

1.M&Aにおける人事のホンネは
  駆け引きや潰し合いばかり

 吸収合併などが行われ、経営陣が刷新されたとき、予想外の人事になることは珍しくない。今回の男性役員(現在の社長)のように、創業社長からは「イマイチの評価」であろうとも、新体制のもとでトップになることはよくある。それにはいくつかの捉え方がある。

 筆者が取材で接する、M&Aで合併する側になった経営者などから聞くところによると、会社を建て直すとき、営業部を中心に体制をつくり直すほうが、スムーズに進むのだという。見方を変えると、管理部門の経験しかない岩上を優遇するほうにこそ、問題があったとも言えるのではないだろうか。創業社長のこのあたりの判断には、歪みがあったのかもしれない。

 メディアがベンチャー企業などのM&Aを報じるとき、このような人事の歪みには目を向けないことが多い。「合併する側VSされる側」というくくりが圧倒的に多い。