工期5年の青写真を1年に短縮させた
シーシ大統領の決断

「第2スエズ運河」開通!<br />エジプト経済再興の陰に“剛腕大統領”の存在第2スエズ運河計画は、従来の運河の一部を拡張、あるいは従来の運河と並行して新たな運河を掘削することにより、滞船なしの双方向同時運行を可能にする
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 エジプトのシーシ大統領の肝いりで始まった第2スエズ運河の工事は順調に進み、予定通りに2015年8月6日、盛大に開通式が挙行される。諸外国から多数の要人が招待されているが、その中には、現在エジプトとの関係が良くないと言われるトルコやカタールからの招待客も含まれているというのだから非常に興味深い。これが意味するものは何なのか。

 地中海と紅海とを結ぶスエズ運河は一部が狭くて一方通行になっていたため、航行する船舶は地中海や紅海、あるいはすれ違いが可能なバッラ・バイパスやグレートビター湖で一時待機しなければならず、時間のロスがこの運河の大きな問題点だった。

 そこでシーシ大統領は、就任直後の2014年夏に運河の一部を拡張、あるいは従来の運河と並行して新たな運河を掘削することにより、滞船なしの双方向同時運行を可能にする『第2スエズ運河計画』を発表したのである。

 施行に当たりエジプト国民だけに売り出された第2スエズ運河建設国債は、年利12%と高率だったこともあり、たちまちにして売り切れ、後に増額したほどの人気ぶりだった。

 この計画の責任者であるスエズ運河庁のモハーブ・マンミューシュ長官は、シーシ大統領に計画実施を命令されたとき、当初は「5年で完成させる」という青写真を描いていた。ところがシーシ大統領は、「時間がかかり過ぎる」と、その青写真を一蹴。「1年で完成させろ!」と命じた。その結果、わずか1年あまりで主要部の工事は終えたということで、8月6日の完成式典を迎えたのである。

 大ピラミッド200個分の土が掘り出されたとされるこの工事には80社のエジプト企業が参加し、工事に当たった技術者や掘削作業員の数は約2万人。使用された掘削機械は4800台だったとされている。

 エジプトの企業以外にも外国企業18社が参加したが、主だったところではアラブ首長国連邦の国営海洋掘削社、ロイヤル・ポスカリス・ウエスト・ミンスター社、ジャン・デ・ヌル社、アメリカのグレート・レーク掘削社などの名前が並んでいる。

 シーシ大統領は2014年に行なわれた大統領選挙に際し、国民に対して、

「エジプトを改革するために、朝早くから夜遅くまで共に汗を流そうではないか!」

 と呼びかけたが、まさに、「やればできる!」のである。そんな意欲的な姿勢が、剛腕政治家と評されるゆえんだろう。