地方創生には
地域のコアコンピタンスの強化が必要

「地方創生」とは横並びのプレミアム商品券のことではない多くの自治体が打ち出す地方創生施策は、政府の政策の後追いになっている

 安倍政権の経済運営の重要な柱である地方創生について、メディアではプレミアム商品券/旅行券ばかりが話題になっています。しかし、これは補助金で消費を一時的に底上げするだけに過ぎないため、地方経済を活性化する効果は公共事業と同じで1年くらいしか続きません。

 従って、そうした短期的な対応と並行して、地方自治体が地元経済の体質強化、生産性向上にどう取り組むかが重要となります。そこで政府は全国の自治体に今年度中に地方創生の総合戦略を策定するよう指示し、地方創生交付金で支援することとしているので、各自治体は地元経済の活性化策の取りまとめに知恵を絞っているのが現状です。

 しかし、ここで気になるのは、多くの自治体が検討している内容が観光振興、農業の強化、医療などの健康産業の創出など、政府が成長戦略で打ち出した政策の後追いが多いということです。もちろん、それが間違っていると言う気はありませんが、全国の自治体が同じような政策を目指すのは、全国一律で公共事業ばかりやるのとあまり変わらないとも言えます。

 従って、そうした政策に加え、地方独自の戦略を打ち出すことが必要となります。そうした観点からは、民間での事業再生と同様に、地元のコアコンピタンス、つまり他の地域にない自分の地域の強みを明確にして、そこにリソースを集中的に投下して戦略的に強化していくべきではないでしょうか。

 実際、欧州で地元経済の活性化に成功している地方都市は、スペインのビルバオやフランスのストラスブールに代表されるように、まず他の地域にない自らの強みである地元の文化と環境を再生し、人が来たい、住みたいと思う街にするところから始めています(サステナブル・シティ)。

日本では伝統文化を
現代化・産業化できていない

 日本は、欧州と同様に長い歴史ゆえに地方ごとに独自の伝統文化や名産品などを持っている国です。それにもかかわらず、伝統文化に長く携わっている人ほど昔のままを保ち続けることが大事と考えがちなため、地方の伝統文化の多くが現代のマーケットに通用しないままとなっているケースが多いように見受けられます。