株式投資の世界には、ディフェンシブ銘柄という用語がある。「守勢に立つ」という意味ではなく、現在のようなデフレ状況下においても「収益に大きなブレが生じない企業」の株価を指す。「不況に耐性のある企業」とでもいえよう。

 コラムのネタとしては、こうした「ディフェンシブもの」よりも、「平成の脱税王」の責任を問う「オフェンシブもの」を執筆したほうが、世間ウケがいいのは承知している。なにしろ、時効期間が過ぎれば脱税できる、と納税者の多くが学習してしまったのだから。かの総理大臣に倣って、先日終了した確定申告の件数は全国的に激減したのではないか、と思えてしまうほどだ。

 とはいえ、今回扱うディフェンシブ銘柄のように、「腰だめ」で銃を構える話題も欠かせない。今回は、医薬品業界をはじめとしたディフェンシブ銘柄を分析するのと同時に、コラムの最後では国際会計基準(IFRS)を持ち出して、押っ取り刀で構える企業の喉元に、銃口を突きつけてご覧に入れよう。

ディフェンシブ銘柄の
「シャープのβ値」を算出

 物騒な前置きはともかくとして、「あの企業は、ディフェンシブ銘柄だ」と呼ばれるためには、第6回コラム(東芝編)で紹介した「シャープのβ値(資本資産評価モデル)」が1よりも小さいことが必要条件である(十分条件ではないことに注意)。業種としては、医薬品・食品・鉄道・電力などが挙げられることが多い。

 次の〔図表 1〕は、それら4業種についてβ値を求めたものだ。

“不況に強い”にも関わらず売上急減!?<br />医薬品業界を襲う「2010年問題」とIFRS

 〔図表 1〕で求めたβ値は、横軸に日経平均の株価変動率、縦軸に当該企業の株価変動率をそれぞれ置いて散布図を描き、第3象限から第1象限に向かって描かれる右上がりの直線の傾きのことである。

 表計算ソフトのExcelを使って、株価変動率から散布図を描き、β値までを一発で求める方法については、拙著『会計&ファイナンスのための数学入門』117ページ以降を参照していただきたい。

 本連載でも過去に散布図を掲載している。第6回コラム〔図表5〕では東芝・シャープ・ソニーを、そして第10回コラムの〔図表2〕では三井住友銀行の散布図を描き、それぞれのβ値までを求めた。