関係性の強い人脈よりも弱い人脈のほうが
いい情報が得られやすい理由

転職では取引先・親族の人脈をあてにしてはダメあなたが転職を考える時、まず頼るのは誰?

 いずれそう遠くない将来、転職も視野にいれている人は、良い転職の情報や機会を得るために、何をなすべきだろうか。

 米国の社会学者、マーク・グラノヴェターが1973年に提唱したウイークタイ・セオリー(弱い紐帯の理論)は良質な転職情報を得るために大切な概念だ。人生の転機となるような情報の取得に関しては、毎日顔を合わせている人との結びつきのような『強い紐帯(結びつき)』よりも、ちょっとした知り合いや年に1回ぐらいしか顔を合わせない知人のような『弱い紐帯』のほうが役に立つという研究結果だ。

 この理論は、企業と労働者のジョブマッチング・メカニズムを明らかにするための実証研究から生まれた。

 調査の対象者(282人のホワイトカラー)のうち56%が人脈を通じて職を見つけたのだが、その中で強い紐帯の人脈よりも、弱い紐帯の人脈から得られた情報で転職した人の満足度のほうが高かった。

 分析してみると、強い紐帯の人から得られる情報は本人にとっては当たり前のもの、既にわかっている情報が多い。何と言っても毎日顔を合わせている仲だ。日ごろ接している情報や人間もほとんど同じなのだから、それも当然だろう。

 それに比べて、弱い紐帯の場合は、思いもよらない情報がもたらされる可能性が高いということがわかった。しかも強い紐帯の人同士でやり取りされる情報は、常日頃のことなので玉石混交だが、弱い紐帯の人からわざわざもたらされる情報は重要なものであることが多いものだ。

 実際に身の周りを見回してみてほしい。強い紐帯とは、どんな関係の人たちだろうか。まずは家族。家族には親戚も含まれる。次が会社の同僚や上司・部下。これに加えて日常的に顔を合わせているのは仕事関係の取引先やお客様といったところだろう。

 さて、これら強い紐帯の人々からもたらされるであろう転職情報を想像してみよう。会社の人間が転職情報をもたらすことはまずない。家族からもたらされるものは、「家業を継げ」とか、「田舎の知り合いの会社」といった話が多いだろう。いずれも想定の範囲で、あまり夢はなさそうだ。