再び、就職氷河期が到来している。

 今春卒業予定の大学生の就職内定率は2月1日時点で80%であり、2000年の81.6%を下回った。5人に1人が職に就けないという厳しさであり、職を得た大学生にしても希望した会社、職種に就けた者は多くないだろう。

 深刻な問題は、この社会人のスタート時点でついた格差が、その後の人生において克服するチャンスが非常に少ないために、そのまま確定しかねないことにある。

 日本の労働者を二つに大別すれば、「大企業に勤める男子正社員とそれ以外」という分類になる。「それ以外」というのは、非正社員であり、女性であり、中小企業に働く人々である。

 「大企業に勤める男子正社員」と「それ以外」の労働条件格差は決定的である。前者の人々は長期雇用保障と年功賃金の恩恵を最大限に受けられる。ところが、後者の人々の労働条件は前者に比べて大きく劣り、なおかつ、雇用そのものが極めて不安定である。

 大企業における“長期雇用保障”とは、その地位が保全されていて容易には解雇されないということである。つまり、新卒でいったん就職してしまえば定年または定年近くまでの数十年間、失職することなく安泰ということである。

 これをひっくり返して考えれば、新卒で就職できなければ、その後に大企業に職を得ることは極めて難しいということになる。なぜか。もはや、高度成長期はとうに過ぎた。低成長時代にいずれの企業も雇用を大幅に拡大することなどありえない。だとすれば、新卒で――もちろん中途採用の機会もあるだろうが――就職した人々の雇用が定年まで保全されていることが、外部者にとっては堅固な障壁になってしまうからだ。つまり、ひとたび非正社員や中小企業勤めで社会人をスタートした人は、再チャレンジの機会がほぼ訪れない。

 さらに、経済環境が悪化すれば、大企業は雇用調整に入る。既存社員の雇用を維持しつつ社員数を削減しなければならなくなるから、定年退職者の補充をしないという施策をとる。つまり、定期採用、新規採用の停止である。こうして、就職できないのは本人の責任では全くないにもかかわらず、労働条件格差は就職時点で確定し、その後の人生で克服することは極めて難しい構造になる。