日経に立派な記事!
運用ビジネスの痛い点を突く

毎月分配型のダメさを指摘した日経の勇気を讃えたい

 新聞を読んでいて、久しぶりに感心した。『日本経済新聞』(8月18日、朝刊)の「一目均衡」というコラムに載った北沢千秋編集委員の執筆による「運用会社のガバナンス」という記事が素晴らしく優れていた。

 投資対象となる会社のガバナンスだけでなく、運用会社のガバナンスも大切だと指摘する主旨の記事だったが、販売会社との不釣り合いな関係、親会社から運用会社への天下りの問題、手数料に傾斜しすぎた販売会社のインセンティブの問題など、運用ビジネスにとって痛いところを突いた的確な議論を展開している。

 それ以上に驚いたのは、運用会社の経営に問題がある実例としての文脈で、「高額の分配金を売り物に高い手数料を取る投資信託が後を絶たない」と挙げたことだ。さらに、記事は、運用業界の顧客が代替わりしつつあることに触れて、「毎月分配型投信には魅力を感じないような個人投資家が主流になる日も遠くないかもしれない。そんな時代にお金を託されるのは、受託者責任を全うできる運用会社に違いない」と文末を結んでいる。

 毎月分配型投信がダメであることを主題に書いて見出しを付けた記事ではないが、文章を読むと、筆者がこの種の商品を「完全にダメ」な商品だと自信を持って結論付けていることが分かる。

 しかし、本連載でも指摘したことのある(「毎月分配型投信『第4世代』のひどすぎる手口」)「3階建て」「4階建て」の仕組みを持つ商品も含めて、高額の分配金で顧客を釣って売る高手数料の投資信託は、今も投信を販売する金融機関にとって売れ筋であり、またこれらを売っている金融機関は、日経新聞にしばしば広告を出す有力クライアントであると同時に、金融関連の記事のネタ元でもある。

 北沢編集委員の的確な問題意識と共に、日本経済新聞という媒体でこの記事を書いた勇気を讃えたい。ついでに、北沢氏の上司及び新聞の編集責任者も褒めていいだろう。FTを買収したことで、メディアとしての日経新聞が一皮むけたのだろうか(本当に!?)、とまで思わせるいい記事だった。