かつて中核事業だった金融事業を捨て、製造業への抜本回帰を進める米ゼネラル・エレクトリック。その徹底した改革の背景には、産業部門の2事業が刻む超高収益への自信があった。(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)

「金融事業の売却は、年内には、1000億ドル(約12兆円)のディールを終えることになるだろう。その額はさらに大きくなるかもしれない」

 7月17日、米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフリー・イメルトCEOは2015年第2四半期決算説明会の席上で、自信に満ちた表情で語った。その背景には、4月に自身がぶち上げた抜本改革が滞りなく進んでいることへの手応えがあった。

「将来のために、GEを再構築するという最も確実で重要な変化を遂げようとしています」。イメルト氏が、その改革案を提示したのは4月10日のことだった。

 内容を要約すると、以下の通りだ。まず、18年までに売上高の90%以上を産業部門にシフトさせる。それと同時に、現在約3500億ドル(約42兆円)ある金融資産の大半を売却し、金融事業から実質的に撤退する──。

 金融事業はかつて売上高の約半分を占め、利益の過半を担ってきた中核事業だけに、大幅縮小は業界を揺るがした。だが、何よりも象徴的だったのは、GEの祖業ともいえる製造業に、徹底注力する方向性を示したことだ。

 トーマス・エジソンが1889年に設立して以来、120年以上の歴史を経て、また製造業というルーツにGEが舞い戻ったのだ。

 ジャック・ウェルチ氏の後を継いで14年になるイメルト氏が、このタイミングで重大な判断を下したのには、二つの理由がある。

 一つは、リーマンショック以後の金融環境の変化で、金融事業が伸び悩んでいたことだ。以前ほどの投資リターンが見込めなくなる中で、常に売却のタイミングを見計らっていたのだという。

 また、個人向けの金融子会社のシンクロニーが昨年の新規株式公開(IPO)を申請した際、「GE内部よりも、外部で高い価値のあるものとして評価を受けた」(GE関係者)ことも、一気に金融事業売却の加速を後押ししたという。