組織よりも個人を重視するのが当たり前と言われる中国人だが、現地に進出している日系企業のカルチャーを尊重し、利点を吸収する意欲を持たなければ、競争に勝ち残ることは難しい。それは、日系企業にとっても同様だ。「中国人材ビジネスの草分け的存在」と言われる浦莱科(集団)公司(PRECC)の戴懿総裁は、自身が携わった人材育成のプロセスを振り返りながら、企業が「欲しがるだけ」の経営から脱却することの重要性を熱弁する。

戴懿
浦莱科(集団)公司(PRECC)の戴懿総裁は、日本企業と中国企業の間に横たわる「人材育成の溝」を鋭く指摘し、「欲しがるだけの経営」では、中国で人材を育てることはできないと語る。

――戴さんが中国で起業されるまでの経緯を教えてください。

 高校卒業後、横浜国立大学経済学部に留学し、日本文部省奨学生として大学院まで進みました。その後米国のシンクタンクに客員研究員として2年間駐在し、2000年に中国に戻りました。

 日本や米国での留学経験を通じて、国家の競争はすなわち人の競争であり、中国が遅れているのはむしろ「人」の側面であること、とりわけ近代国家とその国民に必要となる「物の考え方」の面で、先進国と比べてかなり遅れていることを痛感しました。

 中国が本当の意味で世界のトップに肩を並べるためには、「人の育成」が不可欠だと思うようになりました。そして、10年に及ぶ海外経験がある私こそ、「人の育成」を通じて母国中国に貢献しなければならないと強く思いました。

 私には、中国で人の育成を行なうための方法が2つありました。アカデミックや政治の世界で人の育成を行なう方法と、ビジネスを通じて人の育成を行なう方法です。

 ちょうど2000年頃は、中国経済がものすごい成長を遂げ、「ビジネスをやるならまさにこのタイミング」という時代でした。そこで、実践的なビジネスを通して人の育成をする方を選び、起業することにしました。

――起業後、中国でどのように「人の育成」に携わってこられたのですか?

 中国に戻ってすぐ「PRECC」という会社を作り、「人」に関するコンサルティングビジネスをはじめました。

 具体的には、日系企業、欧米企業、および中国ローカル企業向けに、研修、人事コンサルティング、ヘッドハンティングなどを行なってきました。