世界同時株安は「投機の時代」の終了を示す

 世界経済が大きく変動している。日本の株価も大きく下落した。この原因として一般に言われるのは、中国経済の減速と中国株価の下落だ。確かに、表面的に見る限り、世界の株式市場での値下がりを引き起こしているのは、上海株式市場での株価下落が収まらないことだ。

 しかし、現在生じていることは、短期的・一時的現象として捉えるのでなく、長期的な展望の中で捉えるべきだ。具体的には、「リーマンショック後続いてきた金融市場での世界的なバブルの終了」と捉えるべきである。現在生じている株価下落は、リーマンショック後の新しい均衡を求める動きである。

 重要な変化は、リスクオフ(リスク回避)方向へのポートフォリオの組み換えだ。すでに数年前から、新興国への投資や商品市場では、変化が生じていた。最初に金価格が下落した。つぎに対新興国投資、そして原油、新興国株価と影響が広がっていた。それがいま、日本を含む先進国株価に及んでいるのである。

なぜアメリカは
金融正常化を目指すのか?

 現在起きていることの基本的な背景は、アメリカの金融正常化である。将来を正しく展望するには、やや迂遠ではあるが、アメリカの金融緩和についてこれまでの経緯を把握しておく必要がある。

 FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)は、2008年11月に量的緩和策第1弾(QE1)を導入した。これによって、08年9月までは8000~9000億ドル程度だったマネタリーベースは、1兆ドルを超え、09年11月には2兆ドルを超えた(図表1参照)。さらに11年5月に2.5兆ドルを超え、12年からはさらに上昇して14年8月には4兆ドルを超えた。

 しかし、14年9月からは減少に転じている。その後増減はあるが、ほぼ4兆ドル程度で一定だ。これは、QE1導入以前の5倍近い水準だ。 

世界同時株安は「投機の時代」の終了を示す

  ところで、金融緩和政策が実体経済に影響を与えるのは、マネーストックの増加を通じてである。