>>(上)より続く

妻の身勝手な行動のせいで
息子の心は崩壊していた…

「あとで分かったことですが…」

 健太郎さんはそう言い添えた上で、息子さんから聞いた話をまとめてくれました。妻の潜伏先は実家近くのアパートの一室。そこは真夏なのにクーラーも設置されていない劣悪な住居環境だったようです。妻は健太郎さんに一言もなくアパートを契約し、「帰省するから」という理由で最低限の荷物だけ持ち出し、子どもたちを実家近くの小学校、幼稚園に無断で転校させていたことが明らかになったのです。

 このように「妻の離婚計画」のせいで、息子さんは今まで通い慣れた小学校、仲の良かった友達、そして信頼している先生を奪われ、新しい小学校への転校を余儀なくされたのです。

 息子さんにとって実家近くの小学校は縁もゆかりありませんが、新しいクラスに馴染めなかったようで、同級生たちにからかわれたり、無視をされたり、私物を隠されたりして、いわゆる「イジメ」に遭っていたのです。それでも最初の2週間は我慢して何とか登校していたのですが、イジメの程度はどんどんエスカレートしていき、最終的に同級生がよってたかって息子さんを殴る、蹴る、物を投げつけるなどの「集団暴行の被害」に遭ってしまったのです。

 こうして息子さんにとって、小学校はもはや危険極まりない場所と化したのです。2日に1回しか登校できず、また何とか登校できたとしても、イジメの悪夢を思い出してしまい、心身ともに支障をきたし、最後まで授業を受けることは難しく、途中で1人で下校せざるを得ない状況に追い込まれたのです。

 さらに担当医師の診断によるとLD(=学習障害)を発症した可能性が高いようで、そのせいで普通学級には通うことができず、支援学級へのクラス替えを余儀なくされたのです。専門の精神ケアの先生なしには授業を受けることが難しくなり、その小学校には平日しか子ども専門の精神科医がいないので、息子さんの心理状態は改善するどころか、ますます悪化していくのは当然のことでした。

 食事が喉を通らず、夜もほとんど眠れない生活が続いており、ストレスに苛まれ、体はやせ細り、心は不安定になっていき、最終的には小学校に足を向けることすら難しくなり、完全に不登校の状態に陥ったのです。

「きちんと三食を摂って、決まった時間に就寝して、何の問題もなく小学校に通っていたんです」

 健太郎さんは夏休み前の息子さんの様子をそう振り返りますが、今の状態はあまりにも深刻だということが痛いほど分かります。