森辺 “選ばれる力”は重要ですね。消費財の市場で言えば、ユニチャームの紙おむつや、マンダムの整髪料、フマキラーの蚊取り線香、エースコックのインスタント麺などは、まさにASEANで選ばれる力を持った日本企業の代表選手です。市場シェアの半分以上を持つ商品も少なくありません。これらの商品に共通していることは、「誰のための、どんな商品で、それを使うことによってどのような価値や体験をもたらすのか」が明確に消費者に伝わっていること。

 そして、それらは圧倒的多数の「間口」を通じて伝えられています。つまりは、強固なチャネルを持っているということです。どんなに良い商品でも、そもそも店頭に並んでなければ選ばれません。つまり、選ばれる力とは「店頭シェア」なわけです。新興国市場において、選ばれる商品になるためには、とにかく間口カバレッジが最重要であり、次に大事なのは、獲得した間口における店頭シェアを高めること。そのためには、嫌でも商品の価格や特性を間口に合った形へと適合化させざるを得ません。成功している企業は、最初から選ばれる力を持っていたのではなく、チャネルを重視した結果として、選ばれる力を手に入れたのです。

 これはアフリカ市場でも同様です。アフリカ市場への挑戦は決して早くない、と僕が考えるようになった理由はここにあります。間口カバレッジをいかにして増やすかが、選ばれる力を得る最短ルートです。ただし、間口カバレッジの獲得にはやはり時間がかかります。いま始めなければ周回遅れにもなりかねません。その決断をするうえでも、まずはアフリカの市場を自分自身の眼で見てみることが重要だと思います。

米倉 いまアフリカを見ておくべきポイントは3つあります。1つめは、やはり自分たちが培ってきたものが通用するかを試すという点。2つめは、アフリカまで行くと全体像が見えてくるという点。そして3つめは、その結果、自分たちが世界のなかでどういうポジションを取っていくべきかが明確になる点。この3点に尽きます。

森辺 そうですね。私たちは最後のフロンティアであるアフリカをめざさない手はありません。遠くて遠い国を、もっと早く近い国にするためにも、まずはその足で降り立ち、感じてみないと。アフリカでしか感じられない独特の「空気」がそこにあるんです。

(対談:完)