失敗は様々なパターンがあるが
成功は1つのパターンしかない

 私の持論は「成功したければ、成功者に学べ」ということです。

経営者として成功したければ、成功者に学べ小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 もちろん、失敗から学べることもたくさんあります。しかし、ある時私は気づきました。失敗の反対は、必ずしも成功ではないのです。小学生や中学生の国語の試験で、「『失敗』の反対語を書きなさい」という問題が出たら、「成功」と書かなければ点数はもらえません。しかし、これまでいろいろな人に出会い、多くの会社を見てきた上で私は、ビジネスにおいても人生においても、失敗の反対は時にして別の失敗であることが多いことが分かったのです。

 もちろん、失敗からは多くのことが学べます。自身の失敗で痛い目にあったことや、他者の失敗を教訓にすることはもちろんあります。むしろ、失敗からもしっかりと学ぶ姿勢が大切です。しかし、失敗の反対のことをしたからといって必ずしも成功するものではないのです。

 このことに気づくヒントになったのが、小説『アンナ・カレーニナ』の有名な冒頭の一節でした。「幸せな家庭というのは一様に幸せだけど、不幸な家庭は様々に不幸である」。

 ビジネスも同じなのです。失敗にも様々なパターンがありますが、成功は1つのパターンのように私には思えます。失敗には、経営者が方向づけを誤ったり、実力以上の過度の投資や借入を行う、さらには、後継者や部下の育成の失敗、経営者の公私混同など、さまざまな失敗の要因があります。しかし、成功は私からみれば1つのパターンなのです。

 結論から言えば、どの会社も、「お客さま」や「従業員さん」を大切にしています。そして、「お金」も大切にしています。そして、順序としては、まず「お客さま」、次に「従業員さん」、最後に「お金」を、この順番で大切にしています。「お客さま第一」を徹底し、働く喜びを従業員に感じてもらい、稼いだお金を無駄に使わず、投資や教育にきちっと使うということです。