FOMC (Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)は、日本銀行の金融政策決定会合に当たるもので、米国の金融政策を協議・決定する会議です。特に今回のFOMCは世界中の注目を集めています。すでに米国は量的金融緩和を昨年の11月に止めており、いよいよ利上げの可能性があるからです。

 本稿がリリースされるのは16日の水曜日ですが、FOMCがその16日~17日、水曜日~木曜日に開催されます。FOMCの開催は通常は火曜日~水曜日であり、今回の対応は極めて異例です。金融政策決定に影響の大きい米国の消費者物価指数(CPI)が発表されるのが16日であることもこの日程になった一因でしょう。つまり、金融政策にとって重要な消費者物価指数を確認した上で議論をしたかったのでしょう。

FOMC委員10名中4名は利上げ容認派

 実は、国によって中央銀行の制度は結構違うのですが、FOMCはその投票方法(投票権)が特殊です。

 まず、議長と副議長、そして理事5名に投票権があります。現在、理事は2名が空席のため3名が投票します。米国の連邦準備銀行(以下連銀)は米国各地に12ありますが、このうち、まずニューヨークの理事は常に投票権があります。残りの11を4つの地域に分けて、その4地区の代表1人が毎年輪番で投票権が与えられるのです。

 また、米国の連銀の役員は、他の先進国の中央銀行の役員もそうですが、全員経済学博士号を持っている経済学者です(日本銀行の場合は金融政策決定会合参加者9人中、経済学博士保有者は2名のみ)。そのため連銀の役員は自分の経済政策に対する分析力と判断に対するしっかりした考え方を持っており、その考え方を明らかにしていることが多いのです。インフレに対して厳しい見方をする役員をタカ派、インフレに対して甘い見方をする役員をハト派と呼んでいます。

 今回の投票権をもった委員の顔ぶれを見ると、イエレン議長・フィッシャー副議長、ブレイナード理事・パウエル理事・タルーロ理事、ダドリー/ニューヨーク連銀総裁・ラッカー/リッチモンド連銀総裁・ロックハート/アトランタ連銀総裁・エバンス/シカゴ連銀総裁・ウィリアムズ/サンフランシスコ連銀総裁の10名となっています。このうちパウエル理事・ラッカー総裁・ロックハート総裁・ウィリアム総裁の4名がタカ派です。スタート地点で10人中4名が利上げ方向の姿勢を持っています。つまり、世の中の感覚よりも利上げに向かう可能性が高いのです。

 もちろん、この10名以外の連銀総裁のコメントが新聞等で取り上げられることもがあります。しかし、彼らの発言は意味がないとは言いませんが、彼らは決定には参加できないので、反応する必要はありません。

 米国の連銀は、それまでの量的金融緩和政策がその副作用で経済を悪化させる異常な状態として、早期の“正常化”を望んでいます。その考え方や方向は揺るがないものがあります。

 今回の中国株急落による世界株式市場の乱高下前ですが、筆者がFRB(連邦準備制度理事会)の会議にゲストで参加したときに「今後の通貨量は2020年までに2兆ドルまで落とす」という計画を明らかにしていました。

各国は量的緩和のリスクを回避できるか?

 この7年間の米国株の上昇は、もちろん好調な米国経済の影響によるものでもありますが、なんといってもその主因は、7年間に渡る「量的金融緩和」です。そのため、昨年11月に量的緩和を止めてからは、米国株価の頭は重いのです。