繊維産業は先細りではない<br />先端素材で成長路線へ回帰<br />東レ次期社長(現副社長、6月末就任予定) 日覺昭広 Photo by Toshio Fukumoto

──リーマンショック後の世界同時不況に対応するため、2009年4月から榊原定征社長と二人三脚で構造改革に取り組んできた。その成果は?

 構造改革の要点は二つある。一つは、11年3月期までの2年間でコストを1000億円削減すること、もう一つは景気回復後の市場規模に即した事業体制を整えること。コスト削減は10年3月期で800億円まで進捗しており、達成はほぼ確実となった。

 事業体制については、繊維の市場規模が以前の9割までしか回復しなくても利益を出せるコスト競争力を確保する一方、液晶パネル用フィルムは市場拡大をにらんで生産能力の1割増強に踏み切った。成長路線へと回帰する準備は整ったと考えている。

──繊維業界では、同業他社が相次いで国内生産から撤退している。唯一国内生産を堅持する勝算はあるのか。

 当社はすでに海外に移すべき機能はすべて移しており、コスト削減のために海外へシフトする他社とは位相が違う。国内生産を維持するのは必然性があるからだ。繊維事業で勝つには、他社にはない新しい素材が不可欠。ユニクロとの共同開発で成功したヒートテックがいい例だ。こうした高機能素材の研究開発拠点として、国内に生産工場を維持する必要がある。