銀行の本業中の本業である融資事業が、メガバンクの間で主役の座を失いつつある。その対応策として掲げた、みずほフィナンシャルグループの新戦略の進捗度合いを探った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

「SMBC(三井住友銀行)に勝った」──。みずほフィナンシャルグループ(FG)傘下のみずほ銀行幹部は、2014年度決算の一部分を抜き出して手応えをかみしめた。

 その抜き出した業績とは「役務取引等利益」という項目だ。投資信託の販売や為替、決済などの金融サービスの対価として受け取る、手数料ビジネスの収益力を示すモノサシだ。10年以上、3メガバンクの3番手だった汚名を返上したかたちだ。

 また、「あれは営業力がものをいう指標」(前出のみずほ銀行幹部)のため、その営業力に定評があるSMBCを上回ったことは「自信につながる」(同)と力を込めた。

 この役務取引等利益は「非金利収益」とも呼ばれ、単なる営業力のバロメーター以上の意味を帯びてきた。銀行決算における重要性の高まりが背景にあり、特にメガバンクでその傾向は顕著だ。

 みずほFGの佐藤康博グループCEOも、非金利収益の収益力が今後の「競争力の源泉になってくる」と公言し、その成長を重要な経営戦略として掲げている。

 その理由の一つは、現在の低金利環境だ。融資や国債運用などからの「金利収入」が減少し、穴埋めの必要が出ている。そして、世界を舞台に戦うメガバンクにとっては、さらに深刻な事情がある。国際的な金融規制の強化によって、融資事業が低収益どころか“金食い虫”と化しつつあるのだ。

 その国際金融規制の要は自己資本比率規制だ。金融危機が再発しないように、巨大で世界中に事業展開している金融機関ほど、今まで以上に質の高い自己資本を多く積ませ、経営破綻のリスクをゼロに近づけようとしている。

 しかし、自己資本を潤沢に持つには、自己株式の配当金などの「資本コスト」を払わなければならない。その状況で融資事業をむやみに拡大すると、自らの首を絞めることにつながる。というのも、銀行の自己資本比率の分母は、貸出金や有価証券などのリスク性資産だからだ。つまり、融資を拡大すると分母が大きくなって自己資本比率が下がるため、さらにコストを掛けて資本を上積みする必要が出てくるというわけだ。

 メガバンクの営業担当者によれば、その意識は現場にも浸透しており、「融資獲得のために行内では資本の奪い合い」の様相を呈しているという。また、「融資の量は追わず、収益性の高さなど質を追求する時代にシフトした」。

 そのため、分母のリスク性資産の拡大につながらず、資本コストが掛からない非金利収益の重要性が高まっているのだ。