そのあとに続く大毅選手の世界戦での反則行為、セコンドについた史郎氏や興毅選手の反則を促す指示などはそれ自体がボクシングを冒涜した行為だったが、ボクシング界の対応は常に後手にまわった。

 初の世界戦で反則行為を繰り返した大毅選手が、一度負けた王者のデオンカーセン選手にダイレクトで再挑戦できたのも、業界の常識から考えれば不思議な話だ。

 亀田だから、許される――。

 その思いはテレビ局だけではなく、ボクシング界の内部にもあったのではないか。

リスクをおかせないボクシング

 ポンサクレック戦の興毅選手を見たとき、4戦目の判定勝利を思い出した。

 同じ王座を17度連続防衛したポンサクレック選手は確かにタイの英雄だが、全盛期と比べると体のフォルムが一回り小さくなり、パンチのつなぎのスピードもかつての面影はない。だが、ポンサクレック選手は労なく、興毅選手にプレスをかけるのに成功した。

「亀田とKOはセット」あるいは「ボクシングは戦争や」という強気な発言と乖離するように、ここ数戦の興毅選手は「待ち」を基軸にしたアウトボクシングに徹している。この夜も右のリードブローを打たず、サイドへのステップもきれないから、ポンサクレック選手のプレスにまっすぐさがってしまう。何度か、のぞき見ガードの内側をえぐられて被弾すると、2つのグローブを顔面から離せなくなった。

 WBCの世界戦はオープンスコアシステムだから、4ラウンドが経過するごとに採点が発表されるが、ポイントを失っていることがわかっても興毅選手は捨て身の攻撃に出ることはできなかった。完敗だった。ドローとしたモンテネグロのジャッジは論外だ。史郎氏はタイの立ち会い人とポンサクレック陣営のマネージャーがホテルで会っていた、とクレームをつけていたが、本来なら、このジャッジこそしっかりと事情聴取されるべきだろう。

 いつものことだが、試合を中継したTBSの実況はひどかった。自社イベントを盛り上げることしか考えていないスタッフに、ボクシングの崇高さに目を向けろというのは無理な注文なのだろうか。

 興毅選手がこれからも同じスタイルで闘うのなら、よほど、有利なジャッジメントをしてもらわない限り、勝ち続けるのは難しいだろう。明らかに力が劣る相手と闘うときのように腰を落とし、えぐりこむような強打を世界のトップレベルを相手に打ちこむにはどうしたらいいのか。

 そこには技術的な問題もふくまれているが、ポイントが劣勢でも捨て身の攻撃にいけないメンタルこそ、彼が克服すべき大きな問題だと思う。