会社は中途採用試験のとき、エントリーした受験者の過去を調べると言われる。多くの場合は噂の域を出ないが、いわゆる「前歴照会」と呼ばれるものだ。特に最終面接の前に調べることが多いとささやかれるが、最近は個人情報保護法の影響もあり、こういう行為をする会社は少なくなったと言われる。

 しかし、上場企業を退職した人事部員や労働問題を専門とする法律家の中には、会社が「依然として前歴照会をしている」と言い切る人たちがいる。上場企業の現役の人事部員や、興信所の職員の中にもそれを認める人はいる。

 とはいえ、「前歴照会」はその人の過去や社会的な身分を調べる常識外れの行為だけに、真相は闇から闇に葬り去られているようだ。

 連載14回目は、このいかがわしい行為に悩みながら、「負け組」から脱出しようともがく若手営業部員を紹介しよう。あなたも、現在勤めている会社に自分の過去を調べられている心当たりはないだろうか?

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■今回の主人公――はい上がれない「負け組社員」

 塚本 誠(30歳)仮名

 現在は、社員数300人ほどの専門商社の営業部に勤務。前職では上司と衝突し、退職強要を受ける。会社と争った挙げ句、条件退職になった。今の会社に転職してからも上司とぶつかる。その頃から、前職でのトラブルを上司に持ち出されるようになった。今はこの「前歴照会」に悩んでいる。

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(※プライバシー保護の観点から、この記事は取材した情報を一部デフォルメしています)

会社に過去のトラブルを調べられた?
悪い噂を吹聴する上司に悩まされ……。

 昼の12時25分。塚本は、会社の近くにある公園に小走りで向かった。周りに同僚らがいないことを確認しつつ、携帯電話を背広のポケットから取り出した。そして、東京都の労働相談情報センター(旧労政事務所)に連絡を入れた。