9月25日(金)から27日(日)までエルサレムに滞在した。
エルサレムのユダヤ神殿跡には岩のドームとアル=アクサー・モスクが建ち、イスラームの聖地になっている。すでに報道されているように、その神殿の丘が9月13日に封鎖されて以来、ユダヤ人とパレスチナ人のあいだの緊張が高まり、10月に入ってユダヤ人の一般市民が刺殺されるなどの事件が相次いでいる。パレスチナ問題については部外者が軽々に論評できることではないし、エルサレムがどのような街かは岩永尚子さんによる丁寧な解説がすでにあるので、ここでは実際に体験してみないとわからなかったことを書いてみたい。
[参考記事]
●教えて! 尚子先生 エルサレムに複数の宗教の聖地が集まっているのはなぜですか?

ユダヤ教の祭日時期のエルサレム
今年は、ユダヤ新年が9月14日(月)の日没から15日(火)、ヨム・キプール(大贖罪日)が9月23日(水)、スコット(仮庵祭)が9月28日(月)と29日(火)で、私が訪れたのはユダヤ教の祭日が続く時期だった。またユダヤ教では金曜の日没から土曜の日没までが安息日で、家事を含めいっさいの労働が禁じられているので、土曜の午前中のエルサレム市街はご覧のようにゴーストタウンのようになる。
驚くべきことに、金曜の日没からは路面電車やバスなどの公共交通機関はもちろん、タクシーなども営業を取りやめるため、徒歩以外では移動できなくなってしまうのだ。

下は観光客向けのブランドショップ街だが、こちらもご覧のようにすべてシャッターを下ろしている。ユダヤの安息日のことは知識としては知っていたが、ここまで徹底されているとは思わなかった。「24時間営業」のスーパーも閉まっているので、水1本買うのにも苦労する。

旧市街に近づくと、キッパという小さな帽子を被り、黒いスーツを着た敬虔なユダヤ教徒が嘆きの壁に向かう姿が見られる。より原理主義的なハシディズム派は、子どもでも黒い帽子に黒いスーツ姿で、鬢(耳ぎわの髪)を伸ばして巻き毛にしている。ユダヤの律法に、「頭に剃刀を当ててはならない」と書かれているからだという。


ただし旧市街に一歩入ると、細い路地に露店が密集し、アラブコーヒーを出すカフェや、ピタパンにケバブの料理店なども営業している(ビールが飲める店もある)。これは観光客向けに店を開けているのではなく、東エルサレムに属する旧市街がもとはヨルダン領で、ここに暮らす住民の多くがムスリム(パレスチナ人)だからだ。イスラームでも金曜は安息日とされているが、ユダヤ教のように厳格なものではなく、合同礼拝がある以外はふつうの休日と変わらず労働も禁止されていない。そのため、城壁の内側と外側でまったくちがう世界になるのだ。

土曜日の日没を過ぎると、エルサレムじゅうの店が開店の準備を始める。日中はゴーストタウンのようだったブランドショップ街も、ご覧のように賑わいを取り戻す。

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