マニラを訪れたことがある人なら誰もが経験する大渋滞。通常15分で行かれるところに1時間以上かかることもあり、渋滞による経済損失は年間1兆ペソ、1日約80億円に達するという。解決の方法はあるのか? 元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する、フィリピン在住19年の志賀さんが、その現況をレポートします。
マニラ首都圏の渋滞で毎日30億ペソ(約80億円)、年間1兆ペソ(約2兆6000億円)の経済損失が生じていると国家経済開発庁(NEDA)が発表した。損失額は国内総生産(GDP)13兆ペソの8%、国家予算の半分に相当する。
朝夕のラッシュ時は、自宅からフィリピン退職庁(PRA)まで車で15分で行けるはずのところを1時間は優にかかることもある。マカティの中心地を横断するのに1時間、約束の時間に間に合わせるために途中から歩くこともしばしばだ。
徒歩なら車の半分の時間で行けるし、正確に時間が読めるから安心ではあるが、雨季の真っ只中で雨でも降り出したらおしまいだ。

この渋滞は首都圏周辺、北のケソン・シティ、ブラカン、リザール州あるいは南のカビテ、ラグナ、バタンガス州方面から流入する幹線道路においては地獄のようだ。とくにEDSA通りは北からマカティに向かう唯一の幹線道路で、普通は20~30分で行けるところが、数時間かかることがざらにある。最近では朝夕のラッシュ時間帯ばかりではなく、終日渋滞している。
そのため政府は、国家警察高速道路警備隊(HPG)の隊員約100人を監視の任につけた(首都圏の交通行政は本来、首都圏開発局MMDAの役割)。それに対してメディアは、根本的解決なしには、一時しのぎの策は何の効果もないとこきおろしている。
EDSA通り以外でも、南からマニラ市の港に向かうサウス・スーパーハイウエイもコンテナトラックの列で、終日ほとんど動いていない。首都圏の鉄道は、LRT1とMRTの環状線、マニラを横断するLRT2、PNR(国鉄)しかなく、しかもラッシュ時は超満員で人々は車で移動するしか方法がない。

ちなみにマニラの通勤の主役は、長距離移動のためのバスあるいはUV(小型の乗り合いバン)、中距離移動のジープニー(乗り合いタクシー)、タクシー、そして、短距離用のトライシクル(三輪バイク)あるいはパジャック(三輪自転車)などの公共交通手段で、それに無数の自家用車がひしめき合っている。
そのため庶民は、ターミナルでいつ乗れるかわからないバスなどを待って、毎日、数時間を費やし、ラグナ、カビテ、ブラカンなどのベッドタウンからの通勤にエネルギーを使い果たしている。




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